浸透水のpH・イオン種が火山灰土層の透水性に及ぼす影響について

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要約

人為起源化学物質の土壌特性への影響を解明するため、土壌カラム実験を行ったところ、アロフェン質火山灰土層の透水性が、一価イオンからなる酸性やアルカリ性溶液の浸透で低下することが明らかとなった。一方、酸溶液でも二価の硫酸イオンでは透水性が低下しなかった。

  • 担当:農業工学研究所 農地整備部 広域基盤研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7551
  • 部会名:農業工学
  • 専門:環境保全
  • 対象:農業工学
  • 分類:研究

背景

適正な土層の透水性の維持は、作物栽培に不可欠の要件であると同時に水資源の有効利用を図る上でも重要である。火山灰土は、pH依存性荷電を持ち、酸性側で正荷電が卓越し、アルカリ性側で負荷電が卓越する。このような荷電量変化が土層構造を変化させ、透水性に影響を及ぼすことが子測されるが、これまで、それに関する研究は行われて来なかつた。ここでは、化学物質の負荷や投入による透水性への影響を明らかにした。

成果の内容・特徴

  • イオン強度が1mmol/kgの、種々のpHのNaCl溶液(pH3は塩酸、pH11は水酸化ナトリウム)を、アロフェン質火山灰土の土壌カラムに飽和浸透させて、透水係数の変化を測定したところ、酸性側および、アルカリ性側で透水係数が低下した(図1)。特に、酸性側(pH3)で透水性低下は急激であった。
  • イオン種の透水性に及ぼす影響を明らかにするため、硝酸および硫酸溶液を浸透させたところ、硝酸溶液ではpH4以下で透水係数が低下したのに対し、硫酸溶液では低下せず、むしろ若干上昇することが明らかとなった(図2)。
  • 溶液浸透実験で透水性が低下した土壌カラムの土壌構造を観察したところ、表面から数mmの厚さの層の土壌団粒が壊れ、粗間隙が消失していた。また、土壌水圧の測定から表層数mmの層の透水係数が最も小さいことが確認された(図3)。
  • 土壌の透水性低下の原因は、分散した土粒子の粗間隙への目詰まりであることが明らかとなった。
  • 初期に土壌に硫酸イオンが吸着していても、硝酸を浸透させると硝酸イオンの影響により、透水係数が低下することが明らかとなった(図2)。

成果の活用面・留意点

本成果により、酸性およびアルカリ性溶液の浸透による火山灰土の透水性の低下の機構が明らかになり、酸性物質の負荷による影響予測や、火山灰地帯での水田の浸透抑制工法開発のための基礎資料となる。本結果は、土壌有機物含量の少ない試料によるものである。

具体的データ

図1 流入NaCl浸透溶液pHと浸透係数
図2 各種pH3酸性溶液と浸透係数の変化
図3 pH3HCl浸透量と浸透係数の変化

その他

  • 研究課題名:粘土の電荷が水田土壌中の物質移動に及ぼす影響の解明、火山灰土層への酸性物質流入が土層構造と透水性に及ぼす影響の解明
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成8年度(平成2~5年、7~8年)
  • 研究担当者:石黒宗秀
  • 発表論文等:1)T. Nakagawa and M. Ishiguro : Hydraulic conductivity of an allophanic andisol as affected by solution pH, Journal of Environmental Quality, Vol.23, pp.208~210(1994)
    2)中島 伴, 石黒宗秀:イオン種の異なる酸性溶液がアロフェン質火山灰土の透水性に及ぼす影響について、農土学会講要集、pp.270~271(1996)