流水エネルギーを利用した水車除塵装置

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

農業用水路のゴミがスクリーンに詰まり水があふれるなど、水路内のゴミによる通水障害が各地で問題となっている。そこで、農業用水路の流水エネルギーにより回転する水車の動力を利用して水路内のゴミを除去する水車除塵機を開発した。

  • 担当:農業工学研究所・地域資源工学部・地域エネルギー研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7508
  • 部会名:農業工学
  • 専門:資源利用
  • 対象:計画・設計技術
  • 分類:普及・行政

背景

農業用水路のゴミがサイフォン、ポンプ機場等のスクリーンに詰まり、溢水するなど用排水管理上大きな問題となっている。除塵作業には多くの労力を要すること、また、電動、発動除塵機は高価で、多くの地点に設置できないなど農業用水路のゴミは水利組合等に大きな労力と費用負担となっている。そこで農業用水路の流水エネルギーで水車を回転させ、この動力を利用して水路内のゴミを除去する水車除塵機を開発した。

成果の内容・特徴

開発した水車除塵機の特徴は以下の通りである。

  • 水路の流水エネルギーで水路内のゴミを水路脇に排出でき、労力の軽減が図られる。
  • 水路の流水エネルギーを利用することから、連続無人運転が可能である。
  • 電気・燃料等が不要で維持管理コストが安い。
  • 緩勾配スクリーンのためゴミが滞りにくく、あふれる危険が少ない。
  • ゴミが詰まった場合でも装置を保護する安全装置を設けてある。
  • 構造が簡単で、特殊な技術を要することなく製作が可能である。
  • 水車、スクリーンを変えることで種々の水路に設置が可能である。
    勾配の違いによるスクリーンヘのゴミの付着状況、掻き上げに必要な動力計測などの室内実験結果をもとに水車除塵機を試作し、水田、樹園地、市街地のある都市化、混住化が進んでいる長野県内の農業用水路(幅=1.2m、側壁高=0.6m、勾配=1/500、最大流量=0.4m3/sec、最大流速=1m/sec)に設置し、現地実証試験を行った。装置は、直径=1.3m、幅=1.1mの流し掛け水車、減速ギアを収納した中間軸ボックス、スクリーン、排出用コンベアから構成されている(写真1)。
    7月下旬から9月上旬にかけては厨芥、刈り草、枝が多く、10月下旬以降は落ち葉が多くなるなど季節的な変動が見られた。発泡スチロール、ビニール、空き缶、ペットボトルなどの生活ゴミは毎回排出され、農業用水路がゴミ捨て場となっている実態が明らかとなった(写真2)、写真3)。
    設置後、スクリーンのレーキ本数を増やすなどの改良を加え、順調な稼働状況となった。また混住地区であるため水車回転による水叩き音が問題となり、水車を覆う消音ボックスを設置し、水車直上部で83dBから63dBに音圧が低下できた(図-1)。

成果の活用面・留意点

本装置により、農業用水路内のゴミが低労力、低コストで除去でき、維持管理の労力、費用の軽減が図られる。ゴミの多い地区では、水路から排出されたゴミの除去等の管理が重要となる。
なお本装置は実用新案特許出願中である。

具体的データ

写真1 水車除塵機
写真2 排出されたゴミ
写真3 レーキによる掻き上げ状況
図1 消音ボックス設置の影響

その他

  • 研究課題名:流水エネルギーを利用した農業用水路における除塵装置の開発
  • 予算区分:経常・依頼
  • 研究期間:平成8年度(平成7~9年)
  • 研究担当者:後藤眞宏, 片山秀策
  • 発表論文等:1)後藤眞宏, 片山秀策:流水エネルギーを利用した水車除塵機による用水路内のゴミの除去について, 平成7年度農土学会関東支部講要, pp.105~106(1995)
    2)後藤眞宏, 片山秀策:流水エネルギー利用技術の開発-水車除塵機の実証試験について-, 平成8年度農土学会講要, pp.284~285(1996)
    3)後藤眞宏, 片山秀策:流水エネルギーを利用した水車除塵機の実証試験について, 太陽/風力エネルギー講演論文集, pp.363~366(1996)