重粘土ほ場における暗渠を利用した地下排水に関与する粗間隙量の推定法

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

降雨前に暗渠を閉塞し、降雨終了後、暗渠出口に設けたパイプ内の水位上昇が停止後、水位を測定し、暗渠を開放して総流出水量を測定する。多くの降雨による、水位と総流出水量との関係から、ほ場内の粗間隙量を推定する方法を考案した。

  • 担当:北陸農業試験場・水田利用部・水田整備研究室
  • 代表連絡先:0255-26-3233
  • 部会名:営農・作業技術、農業工学農地整備
  • 専門:農地整備
  • 対象:農業工学
  • 分類:研究

背景

重粘土ほ場の排水性は、暗渠に連続する亀裂等の粗間隙量によって大きく左右される。これまで、粗間隙量の測定は、100cm3の採土管によるpF-水分特性曲線、白色塗料を浸透させての断面調査などが行われているが、粗間隙の連続性の評価や、ほ場全体への適用等が困難であった。これらの問題に対処し、排水機能に係わる試験研究を促進するため、ほ場全体の排水に関与する粗間隙量を簡易に推定する方法を考案するとともに、干ばつや積雪・融雪に伴う粗間隙量の変化の把握に適用した。

成果の内容・特徴

  • 測定方法の概念及び機器の配置は図1、図2に示す。ほ場の暗渠敷設面から地表面までを一つのタンクと仮定し、降雨前に暗渠を閉塞して雨水を貯留する。降雨終了後、暗渠出口に設けた水位測定パイプの水位変化が無くなるのを確認し、水位を測定した後、暗渠を開放して総流出水量を測定する。暗渠出口の水位を粗間隙中の水位に等しいと仮定すると、ほ場の深さごとの粗間隙量は、多くの降雨を対象に測定した水位と暗渠からの総流出水量との関係から、以下の式を用いて算出される(図1、図3、図4参照)。
    V (i, j)=(Q (i)-Q (j)/A×1,000
    VR (i, j)=V (i, j)/((H (i)-H (j))×10)×100
    ここに、i, j:個々の降雨を示す番号で降雨iと降雨j、V (i, j):降雨iと降雨 j に対応した暗渠出口の水位H (i)とH (j)(cm)との間の粗間隙量(mm)、VR(i, j):暗渠出口の水位H (i)との間の粗間隙量の割合(%)、Q (i) 、Q (j):暗渠出口の水位H (i)、H (j)に対応した暗渠総流出水量(m3)、A:暗渠支配面積で通常は一枚のほ場面績(m2)。
  • 1994年の干ばつ直前から、1995年の融雪直後にかけての粗間隙量の変化について、本法を適用した。なお、ほ場は、夏作として大豆が栽培されていた。調査対象とした干ばつ直前、干ばつ直後及び融雪直後の降雨事例は、それぞれ、4、9及び6個である。干ばつ直後の9個の降雨による水位と総流出水量の関係を図3に示す。なお、水位と流出水量が似通ったデータはそれぞれを平均して粗間隙量の計算に用いた。
    1994年の7~8月は干ばつであったため、多くの亀裂が発生した。干ばつ前に1.3%しか存在しなかった下層土の粗間隙は、干ばつによって、深さ約50cmまで増加し、特に、田面下16~30cmでは、8.5%へと大きく増加したことが分かる。一方、この粗間隙は積雪・融雪によって5~6%程度に減少した(図4)。

成果の活用面・留意点

  • ほ場の排水性の評価や作付け体系を検討する上での参考資料となる。
  • 本方法は、ほ場への流出入水が見られない、しかも、亀裂が粗間隙の多くを占めるほ場に適用される。なお、測定値には暗渠直上のモミガラ層内の粗間隙も含まれる。
  • ほ場全体の土壌の水圧が平衡状態に達しているとはいえないため、暗渠出口の水位は、ほ場内の地下水位とは異なる。
  • ここで言う粗間隙量は、暗渠に連続した亀裂を主体としたもので、100cm3の採土管によるpF1.5~1.8で排水される間隙量とは異なる。

具体的データ

図1 考え方の概念
図2 測定方法
図3 暗渠出口の水位と総流出量との関係
図4 干ばつ、積雪・融雪による粗間隙量の変化図4 干ばつ、積雪・融雪による粗間隙量の変化

その他

  • 研究課題名:低湿重粘土圃場における季節的水移動特性の解明、積雪寒冷地水田受託営農における輪作技術体系の確立
  • 予算区分:経常、総合的開発(高品質輪作)
  • 研究期間:平成8年度(平成5~8年、平成3~7年)
  • 研究担当者:足立一日出, 伊藤公一, 吉田修一郎, 高木強治
  • 発表論文等:農業土木学会論文集に投稿中