かん水制御への応用のためのメロン茎部におけるアコースティック・エミッションの検出法

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

植物体自体が発生する音(アコースティック・エミッション、AE)を施設園芸の代表的栽培作物である草本類のメロンにて検出した。AE信号の周波数特性の解析によって、センサーの感度、形状等を特定し、ノイズを低下させる方法を開発した。その結果、ノイズの大きな施設内でもメロンの水分ストレスに関するAEが検出できることを確認した。

  • 担当:農業工学研究所 農地整備部 農業施設環境制御研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7655
  • 部会名:農業工学
  • 専門:基盤・施設
  • 対象:施設環境
  • 分類:指導

背景

植物体自体が生育中に発する生体情報を検出し、速やかに施設内環境のフィードバック制御を行うことで、よりきめ細かな環境制御の可能性が開かれる。植物体が生育中に発生する情報の一つに音(アコースティック・エミッション、AE)がある。ここでは、施設園芸の代表的な栽培作物である草本類のメロンにおけるAE信号検出の可能性を調べる。また、検出されたAE信号の特性から、空調設備を有するようなノイズの大きな栽培条件下でもAE信号の検出が可能な方法を確認する。

成果の内容・特徴

  • パッシブ水耕栽培のメロンの茎部に主周波数が100k~1MHzのAEセンサーを取り付け、AE信号の検出を行った。その結果、晴天日においてはAEの発生回数は夜間よりも昼間の方が多かった。また、昼間では午前中のはうが午後よりも多かった。このAEの発生パターンは木本類でのパターンと類似しており、以前から指摘されているのと同様に植物体内の水分ストレスの上昇に対応しているものと考えられる(図1)。
  • 次に、ノイズの大きな空調された温室におけるメロン茎部からのAE信号の検出を行った。夜間に検出されたAE信号の平均周波数は250KHz以下に存在し、ピーク周波数は100kHz付近に存在するのに対して、昼間は250kHz以上の平均周波数でも計測された(図2)。昼間の信号は水分ストレス及びノイズに起因するAE、夜間は主にノイズと推察されることから、ノイズによる信号をできるだけ除去するためには250kHz以上で感度の高いセンサーの使用が適すると考えられる。
  • 300kHz付近に共振周波数を持つAEセンサーを取り付けた場合のノイズの大きな温室におけるAE信号の発生回数は1と類似のパターンを示した(図3)。AEの検出回数は低下するものの、ノイズの大きな空調設備を有する温室でもかん水制御情報として有用な水分ストレスに関する植物体のAE計測が可能となった。

成果の活用面・留意点

現在、灌漑適期は土壌水分から間接的に決定することが多い。また、茎径の変化から決定する方法もあるが、その場合、水分状態と生長量を分離する前処理が必要となる。それに対して、本測定法は直接的かつ前処理を必要とせず利用できる。ただし、種々の栽培条件下での定量的な議論を行う必要がある。

具体的データ

図1 AEセンサ(AE-900S-WB)によるメロン茎部のAE計測例
図2 周波数の分布
図3 小型AEセンサ(M53)によるメロン茎部のAE計測例

その他

  • 研究課題名:AE(音)を利用した植物生産環境の測定技術の開発
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成5~7年
  • 研究担当者:奥島里美, 大谷敏郎, 佐瀬勘紀
  • 発表論文等:奥島:農林水産技術研究ジャーナル(1995.8)
    OKUSHIMA, OHTANI, SASE: Acta Horticulturae-Sensors for Horticulture-(掲載予定)