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パイプライン水撃圧解析のため、現地パイプラインの試験結果と良好に一致する非定常流数値モデルを開発した。本モデルは弾性水柱理論に基づく基礎方程式を数値積分するものである。本モデルを利用して、分水工バルブの操作時間と水撃圧の関係を予測し、既設パイプラインに悪影響を及ぼさない適正な分水工バルブ操作手法の開発を行った。
パイプラインシステムでは、バルブ等の操作に伴って、必ず水撃圧が発生する。この水撃圧の大きさは水流の時間的変化量の大きさ、即ち、操作速度に影響される。大口径バルブ等重要施設ではー般にモータ駆動なので、計画以上の速度で操作されることは少ない。これに対して 中小口径のバルブでは人力操作の上、近年では操作性の優れた(軽くて手早く開閉ができる)ものが採用される。このため、短時間で操作され設計では予測しなかった水撃圧が発生することもある。
本研究では、安全にパイプラインを管理するため、バルブ繰作に伴って発生する水撃圧を予測するための非定常流数値モデルを開発し、適正な操作方法の開発を行う。
本研究では霞ヶ浦用水真壁幹線系パイプラインを対象に、現地において水撃圧試験を行い、圧力変化を測定した(図1)。これと同時に弾性水柱理論に基づく基礎方程式を直接差分法で数値積分を行う数値モデルを構築した。現地パイプライン上流端には、推定末端圧制御のポンプが設置されているが、時間要素を含んだアルゴリズムが得られなかったため、試行錯誤でアルゴリズムを推定し、モデルに組み込んだ。また、水撃圧の減衰傾向が現地試験と合致しなかったため、層流域における摩擦損失係数を大きくするなどの改良を行い、現地試験結果と良好に合致するモデルを開発した(図2)、(図3)。次に、このモデルを用いて種々のバルブ操作に伴う水撃圧についてシミュレーションを行い、適正な操作手法の開発を行った。
具体的内容は次のとおりである。
パイプラインで発生する水撃圧は、パイプライン事故の大きな原因の一つである。これを回避するため、設計時には、管理時に想定されるバルブ操作を考慮してパイプの構造設計を行うとともに、想定したバルブ操作を実現するための手段(例えば電動モータ駆動、ギヤ比を大きくとる)も講じる必要がある。また管理者に、設計条件の周知徹底を図ることも必要である。