常陸利根川における高塩分濃度対策及び塩分濃度管理技術

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要約

常陸利根川は常陸川水門によって、海水の溯上を防止しているが、舟の通過に伴って閘門から塩水が浸入する。このため、高塩分濃度対策として、除塩ポンプによる高塩分濃度対策と塩分濃度の管理技術を開発した。

  • 担当:農業工学研究所・水工部・水環境研(水理制御研究室)
  • 代表連絡先:0298-38-7545
  • 部会名:農業工学
  • 専門:水理学
  • 対象:農業工学
  • 分類:普及・行政

背景

霞ヶ浦及び常陸利根川は常陸川水門で海水の溯上を防止しているが、舟の通過に伴って、塩水が浸入している。このため、高塩分濃度対策として、小さい閘門と除塩ポンプを新設する閘門の改修を提案した。この提案が受け入れられて、平成5年12月に閘門の改修工事が完了し、利根川水系土地改良調査管理事務所から閘門の改修効果を調査する機会が与えられたので、調査資料を解析した。
一方、河口堰等によって感潮河川や汽水湖を淡水化する事例が多くなっているか、どの地区も渇水時に高塩分温度が問題になっている。これに対して、常陸川水門は除塩ポンプを設置した初めての事例となり、これまで、実験室段階で除塩技術として考えられていた除塩ポンプや除塩サイフォンを実施設に適用した最初の地区となった。
このような関係から、常陸川水門を調査して除塩施設の効果を実証し、新たな研究課題があれば対策を研究して、感潮域の水源に対する高塩分濃度対策と塩分濃度の管理技術の確立を図る。

成果の内容・特徴

平成6年と7年の観測結果を整理し、高塩分濃度対策と除塩ポンプの効果を実証する平成7年の結果を図示した。

  • 降雨量は土浦、江戸崎、鹿島の平均値が1,217mm/年で、図-1に示すように7月下旬から9月上旬に降雨が少ない状態であった。また、ポンプ場取水口地点では塩素イオン濃度が降雨量が少ない時期に高くなるが、水稲の許容塩素イオン濃度(500mg/l)以下になった。しかし、畑作物に対する許容濃度(200mg/l)よりも高くなっている。
  • 舟の通過量は図-2のように、平均13隻/日、最高は65隻/日になり、休日に多い。また、昭和50年代が平均数隻/日で、設計条件の10隻/日よりも多いが、塩分濃度を低く抑えることができた。
  • 水門は図-3のように降雨時に操作し、渇水時には閉じて、フラッシュを行わないが、塩分濃度は低く抑えられている。
  • 除塩ポンプは図-4のように、雨が降らない時期に運転して除塩する。このため、8月の稼働時間が多く、通船数が19.7隻/日で、年平均値や設計値を大きく上回るが、常陸利根川の塩分濃度は水稲の許容塩素イオン濃度以下となり、除塩ポンプによる高塩分濃度対策と塩分濃度の管理技術を実証した。
  • 貯塩水槽の下層では利根川の塩分濃度よりもかなり低く、閘門から浸入する段階で淡水と混合する。これは水理模型実験になかった現象である。

成果の活用面・留意点

常陸利根川の例で、強混合状態の水源に対する塩分濃度管理に利用できる。

具体的データ

図1 常陸利根川の塩素イオン濃度の時間変化
図2 常陸川水門の日通舟量
図3 常陸川水門の日操作回数
図4 常陸川水門の除塩ポンプの日稼働時間

その他

  • 研究課題名:閉鎖性水域の水利施設における水質保全に対する水理制御機能の解明
  • 予算区分:経常・依頼
  • 研究期間:平成8年度(平成6~8年)
  • 研究担当者:加藤 敬, 増本隆夫, 高木強治(北陸農業試験場), 高橋順二
  • 発表論文等:加藤 敬, 大西亮一:河口堰による汽水湖および感潮河川の塩分濃度管理, 平成7年度応用水理研究部会講演集, (1995)