緩勾配除塵スクリーンによる管理労力軽減技術

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要約

用水路・排水路に設置する除塵スクリーンの管理作業の軽労化が要請されている。スクリーンを緩勾配に設置することによる水頭損失抑制効果に着目し、水理実験によりその検証を行った。

  • 担当:農業工学研究所・水工部・水路工水理研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7565
  • 部会名:農業工学
  • 専門:基幹施設
  • 対象:農業土木
  • 分類:普及

背景

除塵スクリーンに係る管理労力軽減には、塵芥による上下流水位差の増加を小さくすること、及び塵芥の除去作業の軽労化が必要となる。一般的に、除塵スクリーンは、水路底面に対し45~90度程度で設置されるのが実態である。これは、占有面積や材料費を抑えるためと考えられる。しかし、設置角度をより小さくすると、塵芥付着時に通水面積が減少しにくいこと、及び水面付近の塵芥が水中へ潜り込みにくいことにより、水頭損失が増加しにくい、すなわち上下流水位差が大きくなりにくいことが期待できる。これにより、塵芥の除去頻度を少なくすることができる。
ここでは、塵芥付着時の、水位差変動とスクリーン勾配の関係について、水理実験により解析し、スクリーンの緩勾配化による水位差増大抑制効果を検証した結果を述べる。

成果の内容・特徴

塵芥付着によるスクリーン上下流水位差の、角度による相違を比較する実験を行い、緩勾配のスクリーンでは、水位差が大きくなりにくいことを確認した。
図-1は、実験水路に異なる角度のスクリーンを設置し、同じ条件で落ち葉を流し続けたときの水位差の変化である。設置角30 ゚のスクリーンを用いた場合、顕著に水位差の増加速度が小さい。例えば、実験開始後15分の水位差は、60 ゚で約6cm、30 ゚で約2cmである。すなわち、30 ゚のスクリーンを用いた場合、同じ条件であれば水位差の増加速度が60 ゚を用いた場合の約1/3となる。図-2は、その時点の流れの状況である。ただし、スクリーン直下流では大きな流速のため局所的に水位が低下するので、写真に示される水位差は、測定水位差より若干大きい。
用いた水路は幅60cm、長さ50m、スクリーンはアクリル製で、バー厚さ5mm、幅30mm、間隔15mmである。流量は0.144m3/s、下流側の平均流速は0.6m/s、フルード数は約0.3となる。10分毎に、約5×3cmの広葉樹の落ち葉を上流から一定量ずつ投入した。スクリーンを通過する落ち葉の量は極めて少なく、無視した。

成果の活用面・留意点

本成果は、水理設計及び土地改良区等の管理技術に活用される。

具体的データ

図1 落ち葉が投入によるスクリーン上下流水位等の時間変化
図2 落ち葉投入15分後の状況

その他

  • 研究課題名:緩勾配スクリーンの機能の解明
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成8年度(平成6年~8年)
  • 研究担当者:島崎昌彦, 相川泰夫, 小林宏康, 中 達雄, 吉野秀雄, 臼杵宣春
  • 発表論文等:中村和正, 島崎昌彦, 吉野秀雄:スクリーンの傾斜角とゴミ付着時の損失水頭の関係について,農土学会講要, pp.258~259 (1995.7)