水田の圃場整備計画作成支援システム

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要約

水田の圃場整備計画作成に当たって、畦畔の形状・面積、進入路をパーソナルコンピュータ上で3次元表示できる計画作成支援システムを開発した。畦畔、進入路の規模・形状が整備前に把握・評価できるため、中山間地域ではとりわけ有効性が高い。また、現実感の高い表示ができるため、住民説明にも効果が期待される。

  • 担当:農業工学研究所・農村整備部・地域計画研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7548
  • 部会名:農業工学・総合農業
  • 専門:農村整備
  • 対象:計画・設計技術
  • 分類:行政

背景

中山間地の傾斜地では等高線型区画に基づく圃場整備の必要性が高まっているが、計画の検討に当たって、従来のような平面図だけを用いる計画手法では、整備後の法面の大きさや土工量を事前に示すことはできない。特に、等高線型区画の設計では、考慮すべき条件が多様化するため、計算機を用い、現実に近い視覚情報のもとで代替案を検討することが不可欠の条件となる。従来から、研究レベルではこれを可能とする計画作成支援ソフトを試作していたが、汎用化を目的としなかったため、利用面での障害が多く、普及に繋げることができなかった。本研究では、近年機能が向上し、一般に普及しているパーソナルコンピューター(PC)等の機材を用いることによって、中山間地域を抱える市町村で利用可能な圃場整備計画作成支援用の汎用ソフト開発を行った。

成果の内容・特徴

  • 市町村が保有するPC(windows95)上で作動可能な、圃場整備計画作成支援用の汎用ソフトの開発を行い(図-1)、市販CADと連結することによって、操作が容易で、現場に適用可能なものをえた(データ交換の形式は、R12J形式のDXLファイル)。
  • 計画支援ソフトの特徴は以下のようである。1)計画作成面での特徴1:)従来、平面図で行っていた計画作成を3次元表示(図-2)のもとで行うことによって、現実に近い作業を可能とすると共に、これを用いた現地説明を可能とした。2:)畦畔法面は従来のソフトでは表示できなかったが、これを可能とすると共に、実体に即した形状表示となるよう工夫した(図-3)。3:)道路と圃場の間に段差がある場合には、進入路を表示できるようにし、画面上での位置修正を可能にした(図-4)。4:)道路及び水路の勾配設定を試行錯誤によって行うことができるようにしたほか、道路勾配の変化による進入路の変化を確認できるようにした。5:)区画間の移動土量を画面上に表示し、区画標高の決定を画面上の試行錯誤によって行えるようにした。2)操作面の特徴画面のスクロール、ズーミング、位置の簡易な同定等ができるため、50~100ha程度の比較的広い地区でも詳細な計画作業が支障なく行える。
  • 現場への適用・普及を容易にするため、操作マニュアル案を作成した。

成果の活用面・留意点

  • 需要先:国,市町村,都道府県,計画コンサルタント
  • 期待される活用面:傾斜地・中山間地の圃場整備事業計画作成、住民説明会
  • 留意点:現段階では利用できるCADが、データ形式によって限定される。

具体的データ

図1 計画支援ソフトのフロー図
図2 計画の鳥瞰図
図3 畦畔法面の表示における改良
図4 進入路の表示

その他

  • 研究課題名:地域情報に基づく計量的土地利用解析手法の開発
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成5~9年度
  • 研究担当者:有田博之(現・農村上席),友正達美;木村和弘(信州大学)・磯部拓二・日高崇司・上月良吾・里岡一樹(日本農業土木総合研究所)
  • 発表論文等:1)有田博之・木村和弘:持続的農業のための水田区画整理、農林統計協会(1997)
    2)木村和弘・有田博之・鈴木尚登・磯部拓二・日高崇司:傾斜地水田の圃場整備計画支援システムの開発、農業土木学会誌65-3、pp.233-239(1997)
    3)日高崇司・磯部拓二・木村和弘・鈴木純・有田博之・友正達美:圃場整備支援システムの開発、農土学会大会講要集、pp.478-479(1997)