地盤改良によるため池の耐震補強技術

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要約

ため池模型の振動台実験によれば、盛土直下の地盤のセメント系改良材による地盤改良は液状化地盤の補強工法として充分な効果があり、盛土部のジオグリッドによる補強はクラックの発生を減らすことが出来る。また、実際に被害を受けた、ため池の地盤改良による補強効果を解析によって検証出来る。

  • 担当:農業工学研究所・造構部・上席研究官、土質研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7681
  • 部会名:農業工学
  • 専門:用排水
  • 対象:計画・設計技術
  • 分類:普及

背景

兵庫県南部地震では、約1,300箇所のかんがい用のため池(小規模アースダム)に被害が発生した。その中で決壊もしくは貯水が著しく困難になるなどの大きな被害があった。被災を受けたため池で地盤の液状化が原因で崩壊したと推定されるため池があり、他の地震の事例でも液状化がため池の大きな被害の原因の1つとして考えられている。このようなことから、液状化を考慮した耐震補強技術の開発が急がれている。そこで、実際に被害を受けたため池の模型を用いてジオグリッド、地盤改良による補強効果を振動台、および解析によって検証する。

成果の内容・特徴

  • 液状化地盤の補強工法として、地盤部をソイルセメントによって改良したため池模型の振動台実験によれば、盛土直下の地盤の補強を行なう事により十分な補強効果がある。
  • 盛土部をジオグリッドで補強することにより、クラックの発生を大幅に減らすことが出来る。
  • モデルにしたため池では被災後、セメント系改良材による地盤改良を行って復旧されたが、この例について液状化を考慮したすべり解析によって、補強効果を定量的に検証出来る。

成果の活用面・留意点

  • セメント系改良材による地盤改良および盛土部のジオグリッドによる補強はため池の耐震補強工法として活用出来る。
  • 農道等の類似構造物に対しても適用の可否を検討していく必要がある。

具体的データ

図1 解析した断面とすべり線の位置
図2 ケース1(無補強)における300gal加振後の変形状況
図3 ケース2(地盤改良)における300gal加振後の変形状況
図4 ケース3(ジオグリッド補強)における300gal加振後の変形状況(地表面変位)
図5 堤体天端中央累積沈下量と加振加速度の関係
表1 すべり安全率の計算結果

その他

  • 研究課題名:ため池等土構造物の液状化特性の解明
  • 予算区分:経常、依頼
  • 研究期間:平成9年度(平成6~9年)
  • 研究担当者:谷 茂・堀俊和