電磁法探査のためのディファレンシャルGPSの利用方法

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

電磁法探査の測点位置を確定するためにディファレンシャルGPSを利用する際には,測定値に平均化処理を行うことによって測位誤差を小さくすることができ,縮尺1,000分の1レベルまでのマッピングを行える。

  • 担当:農業工学研究所・造構部・土木地質研究室、地域資源工学部・地域エネルギー研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7507
  • 部会名:農業工学
  • 専門:資源利用
  • 対象:計測・探査技術
  • 分類:研究

背景

電磁法探査は地質構造調査のための物理探査のなかでも省力的で機動性に優れた方法である。その特長を活かすためには,調査測点の位置確定にGPSを利用することが適している。基準点において作成する補正データを用いて測位精度を向上させるディファレンシャルGPS(DGPS,図-1)の精度を調べ,最適な利用方法を検討する。

成果の内容・特徴

  • 実際の調査規模でのDGPSの測位誤差を調べるために,三角点を基準点と測位点として使う試験を平坦地と山地の2地区,計8地点において行った。各点の測位結果と三角点の座標値との差を誤差とすると(図-2),連続測定を行って測位データの平均化処理を行うことによって,図-3に示すように誤差の平均値は変わらないが標準偏差は小さくなる。すなわち,誤差には平均化処理によって取り除くことのできる変動成分と,取り除くことのできない成分とがある。200回(200秒)の測定値の平均化によって,95%確率の誤差(平均値+2σ)は平面位置が50cm,標高が80cm以下となることから,縮尺1,000~5,000分の1レベルでのマッピングに必要な精度を得られる。電磁法探査の測定に要する時間(1~数分間)を使って連続測位を行い,データの平均化処理を行うことで測位精度を高めることができる。
  • 基準点として与える位置の誤差による測位結果への影響を,補正データ作成用GPS受信機への入力値を故意に変える実験によって調べた。測位点の平面座標値は,図-4に示すように基準点の座標値の変化と同じだけ変化する。変化の方向や標高についても同様である。測位点の座標系に基づく正確な位置を知るためには,基準点の正確な座標値を用いることが必要であるが,補正データの伝送可能範囲に基準点として使える三角点などがない場合には,以下の方法によることができる。a)誤差の累積に留意しながら基準点の位置を離れた三角点などからDGPSによって決定して使う。b)基準点座標値を単独測位などで求めた概略値で与え,測位点位置を基準点に対する相対的な位置関係として求める。

成果の活用面・留意点

本法は電磁法探査以外の野外調査にも適用することができる。軌道上の衛星の配置状態によって精度が低下する時間帯には,状態が改善するまで待つほうが良い結果を得られる。GPSの測位精度は受信機のデータ処理能力にも依存する。

具体的データ

図1 ディファレンシャルGPS
図2 測位結果の誤差の概念
図3 平均化処理による誤差の改善
図4 基準点座標値にオフセットを加えた場合の測位結果の変化

その他

  • 研究課題名:広域表層地質構造解明のための電磁法探査応用技術の開発
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成9年度(平成9~11年度)
  • 研究担当者:奥山武彦,森 充広,長束 勇,中里裕臣
  • 発表論文等:奥山ほか:ディファレンシャルGPSの測位精度と野外調査への応用の検討,農土論集,194,(1998)