小型音波探査装置による貯水池堆砂層厚の測定技術

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要約

ダムやため池などの貯水池において、小型音波探査装置を利用し、少数回のサンプリングと併用することにより、広範囲にわって堆砂層の厚さを効率よく測量する技術である。

  • 担当:農業工学研究所・水工部・河海工水理研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7567
  • 部会名:農業工学
  • 専門:用排水
  • 対象:計測・探査技術
  • 分類:研究

背景

ダムやため池などで堆砂が計画以上に進行すると、施設の貯水機能が損われる。そこで、施設からの放流の機会をとらえて堆砂の一部を排出したり、ポンプで浚渫するなどの対策が取られるが、そのためには、湖底に堆積している細粒土砂の層厚および広がり等を把握する必要がある。しかし、従来この種の調査では膨大なサンプリング点数が必要で、多くの経費と労力を伴った。また、海洋、港湾、湖沼の水中堆積物の探査に音波探査機が利用されることがあるが、農業用ため池等のように規模が小さく浅い貯水池で使用するには、重量、容量、性能、装備上の難点があった。今回の技術は、小型の音波探査装置を用いて、キャリブレーションのために少数回のサンプリングを併用するだけで、農業用貯水池の広範囲にわたる堆砂層厚を測量するものである。

成果の内容・特徴

  • 堆砂層厚測定技術の概要
    1:)今回の技術は、近年小型軽量化が図られた可搬式底質探査装置(千本電機(株),SH-20型)を、当研究室で開発した「ディファレンシャルGPS深浅測量システム」の探査船に装着して農業用ダムの堆砂層厚の測定に適用したものである。
    2:)本システムは、音波(2~12KHz,低周波)を水中に発信し、反射波の強度および反射時間から得られる反射面の差を浮泥層厚として捉えるものである。
    3:)層厚の測定精度は、概ね10cmである。
    4:)キャリブレーションのため数点のサンプリングが必要であり、下記の現地調査では3地点でのサンプリングを行った。
  • 満水時の農業用貯水池において現地調査を行い、本システムの有効性を検証した。
    貯水池上の探査断面を図1に、探査結果例を図2,図3,図4に示す。貯水位低下後、所定の探査場所(図1,P1,P2,P3地点)で層毎にサンプリング(P3地点では、表層のみ)し、粒度分析を行った(表1,図5)。音波探査から得られる結果とサンプリングによる結果を比較し、音波探査により推定された表層の層厚とサンプリングにより得られた表層の層厚がほぼ対応していることが確認できた(図4,P2地点,表1)。

成果の活用面・留意点

  • 堆砂層厚の測定精度を高めるためには、予め貯水池の堆積機構を知った上で十分な音波探査を実施し、キャリブレーションのためのサンプリングが必要である。
  • 2.一般にダム堤体に近いほど一様な浮泥の堆積層が形成されるが、この層ではダム築造前の従前河床(元河床)の探査が可能である。予め一様に分布していると見られる堆砂の乾燥密度を測定しておけば、浚渫土砂量などの算定を行うことも可能である。

具体的データ

図1 底質探査断面の位置
図2 底質探査結果(S1断面)
図3 底質探査結果(S2断面)
図4 底質探査結果(S3断面)
表1 層の深さと50%粒径
図5 サンプリング土砂の粒度分析結果

その他

  • 研究課題名:農業用貯水池の水温・濁水管理手法に関する水理学的検討
  • 予算区分:経常(依頼)
  • 研究期間:平成6~9年度
  • 研究担当者:樽屋啓之,奥島修二,桐 博英,藤井秀人,後藤俊夫,野口克行,寺川浄司,篠崎潤一