農地排水系に適用する浸透性沈砂池システム

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

農地排水系において、濁水流出抑制のために、74μm以下の浮遊砂の流出を抑制する浸透性沈砂池構造を考案した。その構造システムの暗渠濾層は浮遊砂を吸着し、暗渠排水機能は重力沈降を促進する。

  • 担当:農業工学研究所・水工部・水路工水理研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7565
  • 部会名:農業工学
  • 専門:用排水
  • 対象:計画・設計技術
  • 分類:研究

背景

浮遊砂の制御は、従来、水中における重力沈降作用(沈殿)により行って来たが、このためには、大容量の沈砂池が必要となり、小規模排水系では設置が不可能である。このため、沈砂池を補助水源としての利用計画のない場合には、沈砂池を浸透型とし、鉛直下方の流れを形成させ、重力沈降を促進させることにより、浮遊砂を制御するシステムを考案した。本沈砂池は、沈砂池底部に設置した暗渠濾層により、濁水の直接的浄化を行い、下流へ排水させる。常時は沈砂池は空虚になっているため、降雨流出時に濁水の貯留効果が発揮できる

成果の内容・特徴

  • 浸透性沈砂池は、沈砂池底部の暗渠からの排水により、重力方向の流速が増加する。本沈砂池を理想沈殿池(図-1)と見なした場合の懸濁粒子の沈降のモデル化(2次元)を行えば、表面負荷率(wo)は(1)式で求められる。
    (wo:理論上、沈殿池の流入端水面より流入して、流出端でちょうど底に達するような粒子の沈降速度を意味する。)
    (式) ・・・・・(1)
    ここで、Qin:流入量(m3/sec),B:池の幅(m),
    q:単位長さ当りの暗渠排水量(m3/sec/m),
    L:暗渠の長さ(m)(暗渠は、流れ方向に平行に設置)
  • 層厚0.25m(暗渠中心からの距離0.17m,暗渠口径50mm,暗渠排水量0.11~0.21L/s)の暗渠排水濾層による濁度除去については、粒径2.0mmの礫材では、濾層の濁度低減機能はなく、粒径0.25~2.0mmの粗砂材では、低減機能が発現した。このシステムは260~840度(カオリン)の濁水を10~50度(カオリン)に低減できる。
  • 図-2に示す暗渠を底部に設置した沈砂池水理模型(長さ1,000mm,幅500mm,水深100mm)を用いて、暗渠を開閉して、従来型と浸透型との機能の比較を行った。沈砂池越流水の濃度を比較すると、浸透型は沈降作用が促進され、従来型よりも高い濃度低減効果が見られた(図-3(a),(b))。浸透型の流出水(沈砂池越流水+暗渠排水)の積算濃度は、従来型の約53%に抑制できる(図-3(c))。

成果の活用面・留意点

農用地からの土砂流出に起因する濁水抑制工法として実用化が望まれ、基礎的室内実験結果を現地スケールの規模で今後実用化する必要がある。なお、暗渠濾層の浸透能の低下を抑制する濾層構造をさらに検討する必要がある。また、理論上求めた表面負荷率(wo)に対して、適用する安全率を設計上明らかにする必要がある。

具体的データ

図1 流況モデル図
式
図2 浸透性沈砂池実験模型
図3 国頭マージ土壌での適用実験結果
図3-C

その他

  • 研究課題名:急傾斜地小排水路における沈砂池の水理機能の解明
  • 予算区分:経常・文部省科研費
  • 研究期間:平7~9年度
  • 研究担当者:中 達雄、島崎昌彦(四国農試)、相川泰夫、小林宏康、臼杵宣春(北陸農政局)、常住直人、桐 博英
  • 発表論文等:1)中,他:浸透性沈砂池工法による浮遊土砂制御,農土論集 190, PP.113~119(1997)
    2)中,他:赤土流出に対する浸透性沈砂池の適用性について,農土学会九州支部講要集,PP.199~200(1997)