自然圧送パイプライン呑口部の簡便な連行空気排除工法

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要約

パイプライン呑口部の流入管の口径を拡大し、管内流速を下げて混入した気泡の浮上を助長するとともに、空気集積槽と組み合わせることで、管内連行空気をほぼ100%排除する工法である。

  • 担当:農業工学研究所・水工部・水路工水理研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7566
  • 部会名:農業工学
  • 専門:用排水
  • 対象:計画・設計技術
  • 分類:普及・行政

背景

スタンド形分水工,調圧施設等の自由水面を持つパイプライン系では、管内の空気が完全に排除されずに管体の空気滞留量が大きなると、流れを阻害するだけではなく、エアハンマーを生じさせて破裂事故等につながることがある。このため、自由水面より連行された空気を効率的に排除できる工法・装置の開発が要請されている。また、施設の省スペース化,低コスト化も求められている。
このため、パイプライン呑口部の管の口径を拡大した流入管方式によって、呑口部の流速を抑えて管内へ連行された空気の浮上距離を短くするとともに、空気集積槽を設置して、連行空気を効率良く排除できる工法・装置を検討した。
また、現設計基準では、管の呑口から下流側の通気施設まで、7~10D(D:管の直径)程度離す必要があるとしているが、本装置を使用すれば空気の浮上距離が短かくなるため、流入水槽と空気集積槽までを、一体的に設置することによる省スペース化も図った。

成果の内容・特徴

  • 図-1のように、空気集積槽の上下流の管を同じ口径100mmとした「通常方式」と、呑口管をパイプライン本管の2倍の口径200mmにした「流入管方式」の、2種類の実験装置によって管呑口直下流部における空気排除効率を確認した。
  • 写真-1のとおり、呑口管口径10mmの「通常方式」では、空気集積槽を通過して下流へ空気が連行されてしまうことがあるが、呑口管口径が200mmの「流入管方式」では、呑口管の上部に空気が張り付くように流れ、大きな空気のかたまりとなって、空気集積槽で勢いよく浮上して効率よく空気が排除された。
  • 空気排除率は図-2に示すとおりである。呑口管口径が100mmの「通常方式」では、流量や流入水槽内の水深の変化によって、空気排除率は33.3~99.9%を示したが、呑口管口径が200mmの「流入管方式」では、一部を除いて100%排除できた。
  • 空気集積槽を設置するとともに、呑口管の口径をパイプライン本管の口径より大きくすることで、連行きれた空気を効率よく排除できることが確認できた。
  • 分水槽から空気集積槽までの距離は短く、これらを一体化できる。このため省スぺースで効率のよい空気排除工法であると言える。

成果の活用面・留意点

  • 落下水脈による気泡発生が考えられる落下型分水工施設などに対して、省スペースでの連行空気排除対策として有効な施設である。
  • 小口径管路施設には有効であるが、口径が大きい管路施設としては、空気集積槽などが大きくなるために検討が必要である。

具体的データ

図1 実験装置
写真1 空気排除状況
図2 流入管の口径を変えた場合の空気排除率の比較

その他

  • 研究課題名:パイプラインにおける流量制御機能の解明と制御方法の改善
  • 予算区分:経常・依頼
  • 研究期間:平成5~8年度
  • 研究担当者:相川泰夫,島崎昌彦,小林宏康,中 達雄,臼杵宣春
  • 発表論文等:1)相川泰夫,島崎昌彦,中 達雄,小林宏康,臼杵宣春:パイプライン呑口部の連行空気排除手法,平成9年度農業土木学会大会講演会(1997.7)
    2)相川泰夫,島崎昌彦,中 達雄,小林宏康,臼杵宣春:水田パイプライン用定量分水工における空気連行防止対策,農業工学研究所報告NO.37,pp.91~95(1998)