異なる電極配置の感度分布特性を利用する電気探査比抵抗法2次元解析

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要約

電気探査比抵抗法で用いられる電極配置はそれぞれ異なる感度分布をもっており,測定値は電極系外側の比抵抗分布の影響を受けている.そこで,電極系外側の感度が異なる電極配置による測定データを複合して逆解析を行うことにより,測線の外側の比抵抗分布の影響を考慮し,解析精度を向上することができる.

  • 担当:農業工学研究所・造構部・土木地質研究室,企連室
  • 代表連絡先:0298-38-7578
  • 部会名:農業工学
  • 専門:情報管理
  • 対象:計測・探査技術
  • 分類:研究

背景

近年,土木分野における電気探査比抵抗法の適用事例が,探査の利便性及び装置・解析技術の進歩により増加している.一般的な比抵抗法2次元解析では探査測線範囲内の地下を離散化して分割したブロック比抵抗をパラメータとして逆解析を行い,測線範囲外の比抵抗分布は初期条件として与えている.ここでは電極配置が電極系外側にも感度を持つことに着目し,比抵抗分布が既知である水槽モデル実験との比較により,数値モデリングプログラムの精度を検討するとともに,逆解析における指針を明らかにする.

成果の内容・特徴

  • 異なる電極配置の見かけ比抵抗分布への影響
    数値モデリングプログラムの精度検証用の水槽は,温度による比抵抗変化を避けるため恒温室(設定23°C)に設置した1m×1m×1mのアクリル製(アルミ及びステンレス枠)のものである.本水槽では電極間隔が20mmと小さいため,受信器の入力インピーダンスを上げ,誤差の原因となる電極の媒質への接地体積を最小限に抑えたことが特徴である.図-1はこの水槽の水面に地形を与えた場合の,異なる電極配置による見かけ比抵抗分布の違いを示したものである.4極法電気探査で一般的なウエンナー電極配置とダイポール・ダイポール電極配置では,電極系外側の感度(地下のある部分の比抵抗変化に対する見かけ比抵抗の変化)が正負逆になることが知られており,図-1ではアクリル壁及び地形の凹部,凸部の影響が高低逆に表れている.
  • 比抵抗異常に対するモデル実験と数値モデリングとの比較
    図-1のダイポール・ダイポール電極配置による測定見かけ比抵抗値と数値モデリングプログラムによる計算見かけ比抵抗値の対応を図-2に示す.一部にノイズを含んだ測定値が認められるが,地形による偽像及び壁面の影響が計算によって再現されていることがわかる.
  • 複合逆解析の有効性
    図-1に示される測線0点側の低比抵抗化あるいは高比抵抗化は,従来の単一の電極配置による電気探査では,比抵抗異常の位置が測線範囲内であるか外側であるかを判断できない.これに対して,電極系の外側で異なる感度を持つウエンナー電極配置とダイポール・ダイポール電極配置による測定値を複合し,測線外側までを解析領域として逆解析を行うと,単独の電極配置による逆解析に比べ測線外側の高比抵抗分布が再現され,解析結果が改善される(図-3).

成果の活用面・留意点

本手法は,従来より解析可能領域を広げ,地形の急峻なダムサイト等における電気探査の解析精度向上に貢献する.本手法の有効性をいくつかの現地データを用いて検証する必要がある.

具体的データ

図1 実験水槽の見かけ比抵抗分布図
図2 地形モデルの測定値と計算値の比較
図3 複合逆解析結果と通常逆解析結果の比較

その他

  • 研究課題名:電気探査比抵抗法及び比抵抗トモグラフィ法の逆解析精度向上のための水槽モデル実験
  • 予算区分:経常(所内特研)
  • 研究期間:平成9年
  • 研究担当者:中里裕臣,森充広,奥山武彦,毛利栄征