多様な担い手による農地利用を促進するための農地基盤条件

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

多様な担い手による農地利用を促進するための農地基盤条件を明らかにした。作業受委託、貸借等の担い手による農地の利用形態に応じて、必要となる農道、用排水、区画面積等の整備水準を明らかにし、問題がある場合の対策を整理した。

  • 担当:農業工学研究所・農村整備部・地域計画研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7548
  • 部会名:農業工学・総合農業
  • 専門:農村整備・農村計画
  • 対象:計画・設計技術
  • 分類:普及・行政

背景

農村地域では、ほ場整備等の農地基盤条件の改善と多様な担い手の育成による農地利用の促進が進められいる。しかし、従来の農地基盤整備は、主として地権者の意向に基づく整備内容であったため、個別農家の規模拡大、集落営農、受委託組織等、多様な担い手がそれぞれ必要とする農地基盤条件と合致せず、有効利用の妨げとなる場合がある。そこで担い手経営体が農作業受託や貸借を行っている地域の実態調査(8地域)等の結果に基づいて、担い手の農地選好の特徴を整理し、必要となる農地基盤条件をとりまとめた。

成果の内容・特徴

  • 農地の利用集積の必要条件となる農地基盤条件は、担い手の農地選好の特徴から、A.機械作業可否、B.機械作業効率、C.収量、D.ほ場管理効率、E.共通インフラ管理効率、の5つに整理できる(表1)。
  • 上記A~Eの各条件についての具体的な内容、及び必要とされる整備水準の目安は、表1ようにまとめられる。更に、整備水準に問題がある場合のハード・ソフト対策例を左側に付記した。なお、ハード対策には、耕区単位で小規模に実施可能なものや、効果に一定の限界があるもの等の多様性があるため、表1の中で記号(*、◎○△:欄外の凡例を参照)で表示している。
  • 担い手が農地利用集積を行う場合に、どの農地基盤条件を重視するかは、地権者との作業分担、生産物の帰属関係によって整理できる(表2)。担い手の農地利用は、一般に機械作業受託から、次第に多くの作業を担う方向で高度化するが、それに従って、より多くの農地基盤条件を満足するよう対策が必要になる。

成果の活用面・留意点

  • 表1、表2を利用して、地域の農地基盤条件の整備水準と、担い手の農地利用形態の意向の整合性をチェックすることにより、農地利用集積推進のために必要なハード・ソフト対策を地域の農地・担い手の実状に即して具体的に検討することができる(図1)。
  • 留意点:表1の整備水準の閾値等は事例調査に基づいており、実際に適用する場合には、その時点及び対象地域の立地条件、担い手の意向等に応じて、適宜修正する必要がある。また、定性的な表記(最小地耐力の「作業阻害」等)は、実際に使用する機械等に応じて、定量的な基準に置き換えることが望ましい。

具体的データ

表1 農地基盤条件ごとの整備水準、及び不備がある場合の対策例
表2 担い手の農地利用形態と着目する農地基盤条件の関係
表2 担い手の農地利用形態と着目する農地基盤条件の関係

その他

  • 研究課題名:広域的な土地利用調整手法の開発
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成10年度(平成7~10年)
  • 研究担当者:友正達美、有田博之、松尾芳雄、原山昭彦
  • 発表論文等:1)友正・有田:傾斜地水田の整備水準と土地利用動向(2)―圃場条件による小作料格差の事例―、平成8年度農土学会講要,132-133(1996)
    2)友正・有田・原山:農地集積の推進に関わる圃場整備の効果―分析フレームの提示―、平成9年度農業土木学会大会講演要旨、pp.488~489(1997)