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汚泥フロックや団粒のモデルとしての透水球を作成し、その沈降速度を実測と理論より明らかにした。特に、細管中の沈降におよぼす壁面効果を明らかにし、透水球の沈降理論の修正を行った。
汚泥や赤土等が凝集してつくるフロックの沈降(a)は、水処理のための固液分離において、最も重要な操作とされている。一方、土壌中へ処理水を還元する場合や汚泥をろ過する場合、微小フロックの移動(b)は、目づまりに関連する重要な問題として位置づけられている。さらに、団粒内部に蓄積する金属等を強制流で洗浄する場合、内部の流れ(c)の決定が必須とされる。本研究では、これらの課題の基礎となる(a)フロックの沈降・(b)フロックの細管中での移動・(c)フロック内部の流れにっいて、基本的知見を得るべく、理論解析の可能な透水球をモデルとして細管中での沈降実験が行われ、これに基づき流体力学的解析が行われた。
(1)フロックのモデルとして図1に示すようなポリウレタン製の透水球が試作された。(2)実験では、まず、ガラス細管中の鉱油中で剛球の沈降測定が行われ、中心軸に沿っての落下速度について図2の結果が得られた。すなわち、剛球沈降におよぼす壁面効果の理論が高い精度で実証された。(3)次に、軸からずれた時に沈降速度がどのような変化をするかの離心効果にっいての実験が行われ、図3に示すように壁面の影響で中心軸からずれた位置に最大の沈降速度が生ずる現象が具体的に示された。(4)この離心効果による誤差を考慮しつつ、さらに、剛球を透水球に変えた時に沈降速度が何倍に増えるかの透水効果についての実験が行われ、図4のように管が細くなれば透水の影響が大きくなることが定量的に示された。(5)最後に、壁面効果のない時(管径無限大)の理論と実験からの外挿値とを比較し、従来正しいとされてきたDebye等の解が透水性が悪くなると成立せず、Sutherland等の解に近づく事が示された。すなわち、内部の流速で考えると、今回の測定領域で半分以下の流速になることが判明した。なお、透水球への壁面効果(図4)を無視した松本等の実験結果(図5)は下方に修正される必要があり、透水性の良い粒子においてもDebye等の解が成立していないことが示されている。
細管中におけるフロックの沈降速度は、フロックの易動度を表し、これに基づき膜処理や土壌処理における細孔中での微小フロックの移動速度が算定可能となる。さらに、この壁面効果のデータに基づき、単一フロックの沈降だけでなく、多数のフロックの干渉沈降が定量的に明らかにされる。沈降や拡散の理論については発表論文等の1)2)3)に示されるが、特に、境界面(球表面)での応力の伝わり方が重要となる。又、フロック構造は4)に示されるように一様でない場合もあり、その留意が必要とされる。