中山間地域における遊休化農地発生要因の影響度合の数値的解析法

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要約

中山間地域の農地基盤条件に関わる農地遊休化要因について、遊休化農地面積割合に及ぼす影響度合を、数量化理論I類を用いて数値的に示す方法を明らかにした。

  • 担当:農業工学研究所・農村整備部・施設管理システム研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7666
  • 部会名:農業工学
  • 専門:農村計画・資源利用
  • 対象:計画・設計技術
  • 分類:研究・行政

背景

中山間地域に賦存する農地資源を有効に活用し、農業生産の振興と多面的機能の発現を図るためには、中山間農地を適正に評価し、遊休化に歯止めをかける必要がある。そのためには、中山間農地が遊休化する要因を明らかにするとともに、遊休化農地発生要因の影響度合を定量的に解明する必要がある。
そこで、水田団地ごとに算定した遊休化農地面積割合と主要な農地基盤条件に関わる遊休化要因との相関関係を統計的手法で分析することにより、遊休化農地の発生要因の影響度合を数値的に明らかにする方法を開発した。

成果の内容・特徴

  • 遊休化農地面積割合と主要な農地基盤条件に関わる遊休化要因との相関関係の解析に、数量化理論I類を適用することにより、農道の完備状況など、定性的に計測される遊休化要因の解析が可能になった。
    なお、数量化理論I類は、定量的な外的基準を目的変数として、定性的変数として表現した説明変数の相関関係を定量的に分析する多変量解析手法である。
  • 数量化理論I類の数式における外的基準に遊休化農地面積割合を用いて、説明変数として主要な農地基盤条件に関わる遊休化要因を取り上げることにより、農地の遊休化要因の影響度合を数値的に明らかにすることができる (図1)。
  • 図1の手法を、宮崎県G町において具体的に適用することにより、遊休化農地発生要因の数値的解析法として有効であることが確かめられた。
    G町は冬季には積雪のある中山間地域で、未整備の水田が傾斜地に多く分布しており、農道も未整備区間が残されている。表1に示す(1)~(5)の独立した説明変数は、G町の農地基盤条件を規定している主な要因のうち、条件が均一な用水路関連要因を除いた5要因である。地域の特性により説明変数を加除する際には、重相関係数値を参考にして、遊休化農地面積と遊休化要因の相関の有無を確認しながら適用することにより、解析の精度が確保される。
  • 地域の特性により説明変数を加除する際には、重相関係数値を参考にして、遊休化農地面積と遊休化要因の相関の有無を確認しながら適用することにより、解析の精度が確保される。

成果の活用面・留意点

  • 遊休化農地発生に関わる要因の影響度合を数値的に明らかにすることができ、中山間地域のゾーニングなど土地利用計画策定の基礎資料として活用できる。
  • 他の要因との関わりを考慮に入れた効率的な遊休化抑止対策のための知見が得られる。
  • 手法の適用に際して、水田団地間で潅漑形態が異なる地域では用水条件を遊休化要因に加えるなど、説明変数を加除する必要がある。
  • 0.6を上回る程度の重相関係数値が期待されるが、サンプル数が極端に減少することにより見かけの重相関係数値が高まる場合があるので注意を要する。

具体的データ

表1 遊休化農地発生要因の影響度合
図1 数量化理論I類の式と分析指標との具体的対応

その他

  • 研究課題名:生産視点からみた農地の評価手法の開発
  • 予算区分:連携開発「中山間資源」
  • 研究期間:平成10年度(平成9~11年)
  • 研究担当者:石田憲治
  • 発表論文等:石田憲治、中山間地域水田団地における遊休化農地発生要因の解明、平成11年度農業土木学会大会講要(投稿中)