ラドン濃度の減衰を利用した地下水流速の計測法

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要約

地下水流速を計測するためにトレーサ試験が実施されてきたが、流速が10-5cm/sよりも遅い場合には、適用できなかった。そこで、観測孔内でのラドン濃度の減衰を利用した孔内流速の計測法を提示し、その有効性を確認した。

  • 担当:農業工学研究所・地域資源工学部・地下水資源研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7540
  • 部会名:農業工学
  • 専門:環境保全
  • 対象:現象解析技術
  • 分類:研究・普及

背景

地下水流速を把握することは、地下水を管理するうえで必要不可欠であるが、流速が10-5cm/sよりも遅い場合、従来のトレーサを用いた手法ではそれを計測することは困難であった。そこで、観測孔内でのラドンの減衰を利用した地下水の孔内流速の計測法を提示し、その有効性を確認した。

成果の内容・特徴

  • 原理
    ラドンは地中のラジウムから供給される放射性のガスで水に溶解するが、供給を絶たれると半減期3.8日で濃度が低下する。すなわち、観測孔に流入した地下水のラドン濃度は半減期3.8日で低下する。その特性に着目し、孔内の平均ラドン濃度(Ct)、帯水層のラドン濃度(Ci)、ラドンの減衰係数(λ)、孔の半径(r)から地下水の孔内流速(v)を求める式を導いた。
    この式は一般化するため、無次元数Tを導入している。T=λr/vである。(1)式を解くと、図1のようなラドン濃度と流速の関係が求まる。
  • 採水方法
    採水は、図2に示したように実施する。まず、Ctを測定するため、孔の径とほぼ等しい外径の簡易採水器を用いて溜まり水を採水する。次いで、ポンプを降ろし、溜まり水を排水した後、地層から流入した水(Ci)を採取する。もし、孔内にポンプを降ろすのが困難であれば、簡易採水器による採水を時期を変えて実施することにより、流速の変化を把握することができる。
  • 適用結果
    この計測法を現地(第三紀層泥岩地帯)に適用した。ラドン濃度測定の結果は、Ct/Ci=0.60であった。従って、図1より、T=0.67となる。これに、λ=2.1×10-6s-1、r=2.0cmを代入すると、v=6.3×10-6cm/sとなった。この値は、揚水試験の結果と水面勾配から推定される流速の範囲内にあり、妥当であると考えられた。

成果の活用面・留意点

この手法は、孔内での流速が10-5~10-6cm/sの時、有効である(図1)参照。

具体的データ

式1
図1 地下水のラドン濃度と流速の関係
図2 採水方法

その他

  • 研究課題名:地下水盆管理の高度化のための基礎的研究
  • 予算区分:経常、依頼
  • 研究期間:平成10年度(平成7年~11年度)
  • 研究担当者:濱田浩正、今泉眞之、二平聡
  • 発表論文等:1)Hiromasa HAMADA:Estimation of Groundwater Flow Rate Using the Decay of 222Rn in a well,J.Environmental Radioactivity(1999)掲載予定
    2)濱田浩正 今泉眞之 小前隆美:ラドン濃度を指標とした地下水調査・解析法、農業工学研究所報告、36、17-50(1997)