反力計測型一面剪断試験機の周面摩擦特性とその補正法

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

反力計測型一面剪断試験機における周面摩擦の発生特性を明らかにして、粘着力の程度やダイラタンシーの正負等に依存する供試体の土質に応じた周面摩擦の補正法を提案した。

  • 担当:農業工学研究所・農地整備部・上席研究官・地域資源工学部・土地資源研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7679 0298-38-7670
  • 部会名:農業工学
  • 専門:農地整備
  • 対象:現象解析技術
  • 分類:普及

背景

農地や農業用施設の整備に伴う斜面や土構造物の設計においては、土の剪断強度が問題となる。一面剪断試験機は土の剪断強度を測定するための試験機として簡便であるが、周面摩擦による垂直応力の誤差が大きい。この補正法として、農工研では垂直荷重の載荷に対して反力受け側に荷重計を設置した一面剪断試験機(反力計測型一面剪断試験機)を開発している。一面剪断試験機では、乾燥砂や正規圧密粘土など、供試体の土質の違いにより周面摩擦の発生特性が異なるため、その特性に応じた補正法を示す必要があった。このため「豊浦砂をセメントで固めたモデル供試体」、「乾燥した豊浦砂」、及び「正規圧密状態のカオリン粘土」等を用いて、供試体の土質の違いによる周面摩擦の発生特性を明らかにし、供試体の土質力学的特性に応じた周面摩擦の具体的な補正法を提案する。

成果の内容・特徴

  • 二種類のモデル供試体による比較試験から、剪断面での分離の有無により周面摩擦の発生が大きく異なることを明らかにした(図-1)。両者の力の釣り合い状態は図-2のように整理できる。
  • 正規圧密カオリン粘土では図-2に示した非分離供試体のモデルに近く、剪断面の垂直力は周面摩擦を上下供試体の厚さに比例配分すれば求められる(図-3)。このため正規圧密粘土の定圧一面剪断試験では、剪断面の垂直力を反力側荷重計で測定した値とすると、剪断強度定数を過大に評価して危険側の設計となる。
  • 乾燥した豊浦砂では、供試体は個々の砂粒子の集合体であり引張力が小さいため、図-2に示した分離供試体のモデルに近い。この場合には、剪断面の垂直力は反力受け側に設置した荷重計で直接測定できる(図-4)。
  • 一般の土試料の剪断試験においては、粘土含有率や剪断応力―垂直応力のベクトル曲線から反力側垂直力の増減傾向を参考にして周面摩擦の発生特性を判断し、上記2又は3に示したいずれかの補正法を選択する。

成果の活用面・留意点

様々な種類の土試料に対する一面剪断試験の精度が向上するため、簡易な試験により土の剪断強度定数が求められるようになり、設計の低コスト化に繋がる。

具体的データ

図1 二種類の供試体と反力側垂直応力の比較
図2 二種類の供試体モデルと力関係
図3 正規圧密カオリン粘土の補正した一面剪断試験と三軸圧縮試験の比較
図4 乾燥した富浦砂の補正した一面剪断試験と三軸圧縮試験の比較

その他

  • 研究課題名:農地造成における法面の表層崩壊と剪断強度特性
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成7~9年
  • 研究担当者:古谷 保、小倉 力
  • 発表論文等:(1)「反力計測型一面剪断試験機」における周面摩擦の補正法と斜面安定問題への適用(古谷 保、小倉 力、農業工学研究所技報、195号印刷中、1999.3)