観光農業施設における観光振興効果の農道寄与分の推計法

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要約

観光業施設における観光振興効果の農道整備寄与分の推計法を提案した。グラビティモデルにより観光農業施設の動員数を推計し、農道整備前後での値を比較することにより、農道寄与分を分離することが可能である。

  • 担当:農業工学研究所・農村整備部・広域基盤研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7551
  • 部会名:農業工学
  • 専門:用排水
  • 対象:計画・設計技術
  • 分類:行政

背景

農道整備による効果の評価には事前事後を比較する方法が用いられてきた。しかし、この方法では農道整備以外の要因による効果も評価される。これまで、農道寄与分のみの効果抽出は困難であった。ニュートンの万有引力の法則を応用したグラビティモデルは観光・レジャー施設の需要予測などに用いられている。観光農業施設への農道整備の効果は整備前後での動員数推計値の比較により評価が可能である。本研究ではグラビティモデルによる観光農業振興での農道寄与分の推計法の提案と具体的な地区における試算を行った。

成果の内容・特徴

  • 推計方法:
    (1)グラビティモデル式(表-1)により観光農業施設の90分圏の市場規模、周辺宿泊観光客数、敷地規模から敷地1m2当たりの動員数を求めることができる。これに敷地規模を乗じることで観光農業施設の動員数が求められる。
    (2)農道整備により走行距離と速度が変化し、90分圏の市場規模が拡大する。それに伴い施設の動員数が増加する。整備前後での動員数の差によって農道整備の寄与分のみを求めることができる。
    (3)経済的価値への換算は、動員された客一人当たりの観光農業施設における消費額を乗じることで求められる。この消費額を一定の評価期間内で集計することにより、農道整備の観光農業施設への便益額が求められる。
  • 試算結果
    大分県の農業用道路沿線のふれあい牧場(町田バーネット牧場)を例に試算した(表-2)。
    (1)ふれあい牧場の聞き取りでの年間予想動員数は150.0千人である。動員数は農道のみで8.3%、高速道路のみで8.4%、両方整備されたことで10.5%増加になる(表-3)。
    (2)客一人当たりの消費額を2,000円と仮定すると、売上高は農道のみで2,260万円、高速道路のみで2,280万円、両方整備されて2,840万円増加している。
    (3)30年間の便益は農道のみで3.91億円、高速道路のみで3.94億円、両方整備されて4.91億円となった。この便益と道路建設費を比較すると農道のみで9.23%、高速道路のみで0.08%、両方整備された場合0.09%が建設費に対する便益の割合となった(表-4)。

成果の活用面・留意点

実際の効果推計に活用する際には、観光農業に関するデータ収集と係数の一般化が必要である。

具体的データ

表1 グラビティモデル式
表2 対象施設の概要
表3 4つのケースの計算結果
表4 道路整備の牧場への効果

その他

  • 研究課題名:農産物流通基盤の立地配置評価手法の開発
  • 予算区分:経常、受託
  • 研究期間:平成10年度(平成8年~10年)
  • 研究担当者:谷本岳、丹治肇、竹村武士
  • 発表論文等:1)谷本岳・丹治肇・竹村武士:農道整備の条件不利地域への展開方向、農土誌投稿中
    2)谷本岳・竹村武士・丹治肇:農道整備による観光農業振興効果の試算、平成10年度農土学会講要集、pp.776-777(1998)