主成分分析を用いた畑地帯における地域特性の時系列的・定量的評価手法
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要約
畑作農業と自然環境との関係など地域の現状がどのようになっているかという現状把握を時系列的に、定量的に評価する手法を開発した。様々な指標による検討から24個の指標を抽出し、主成分分析を用いて農業活力、経済活力、水質環境度に関する主成分が得点化されて地域特性を把握できる。
- 担当:農業工学研究所・農村整備部・畑地かんがい研究室
- 代表連絡先:0298-38-7552
- 部会名:農業工学
- 専門:農村整備
- 対象:設計・設計技術
- 分類:普及・行政
背景
畑地帯の農業は、生産性の向上のため畑のほ場整備として、区画整理、農道、畑かん施設などを総合的に整備しているが、自然環境に対して負荷を与えているとも言われている。それぞれの畑地帯がどのような現状にあるのか、これまでの農業によりどのような履歴を辿ってきたかを把握することが、環境保全型農業の推進にとって重要な課題となってきている。そのため、本研究では、地域の現状を評価する指標を多角的視点から抽出し、都道府県別データをもとに主成分分析を用いて評価する手法を開発する。そして、畑地かんがい等の一次整備が完了した地区の事例を用いて検証し、これまでの畑地農業がもたらした効果や影響を時系列的に、定量的に解明する。この方法により今後進むべき畑地の整備の方向を見出すことに貢献することを目的とする。
成果の内容・特徴
開発した評価手法の主な特徴は次の通りである。
- 都道府県別に1990年時点における農業活力関係の8指標、経済活力関係の8指標、水質環境度の8指標の合計24個の指標に関するデータを収集し、主成分分析を用いて標準偏差値や固有ベクトル値を算定した。(表1)、(表2)
- この値をもとに、ある地域の24個の指標に関するデータを収集することで、1990年時点における主成分得点が算定出来る。(式(1))
- また、農業センサス、水質年鑑、地域活力度図鑑等の既存のデータを活用する視点から1980年や1995年のデータを収集することで、比較的容易に時系列的、定量的に地域の状況がどのように推移してきたかを把握できる。(図1)、(図2)
- 2地区の事例を用いた多角的評価手法の検証では、生産基盤等の整備をもとに畑作農業の進展により生産性の向上が図られたが、水質環境度は悪化してきていることが判明した。
- この評価手法により、畑地帯の地域特性を時系列的に、定量的に評価できる。(図3)
成果の活用面・留意点
データ収集の問題から、地域の大きさは、市町村単位を最低限とするが、望ましいのは複数市町村にまたがる広域的な範囲を基本とすることで有効な手法となる。なお、地区事例データの収集による予測技術への展開が望まれる。
具体的データ






その他
- 研究課題名:畑地のほ場整備に関する多角的評価手法の開発
- 予算区分:経常・依頼・受託
- 研究期間:平8~10
- 研究担当者:小泉健、安部征雄、吉田弘明
- 発表論文等:1)小泉健、安部征雄、吉田弘明:地域活力度にみる農業農村整備事業の意義と課題、農土論集194、pp.105-103(1998)
2)Koizumi Takeshi, Abe Yukuo, Yoshida Hiroaki : Proposal of a regional evaluation method for upland field cases, Trans. JSIDRE197, pp.45-55(1998)