アコースティックエミッションによるトマトの水ストレスの検出
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要約
水ストレスが変化する場合、トマトのアコースティックエミッション(AE)は蒸散量そのものとは直接的関係は小さかった。しかし、蒸散量が増加する場合、蒸散量の増減率(AT)と相関が高いことが明らかとなった。すなわち、水ストレスがない場合、AEとATの間には正の相関があり、水ストレスがある場合には、負の相関があることが明らかとなった。これは、水ストレスの一つの指標として応用が可能である。
- 担当:農業工学研究所・農村整備部・農業施設環境制御研究室
- 代表連絡先:0298-38-7655
- 部会名:農業工学
- 専門:農業施設
- 対象:計測・探査技術
- 分類:研究
背景
これまでに、作物のアコースティックエミッション(AE)は蒸散量T(gh-1)と関連があり、水ストレスの評価手法となり得る可能性があることを明らかにしたが、AEと水ストレスの具体的関係は明らかにされていない。そこで、トマトを用いて人為的に水ストレスを変化させ、AEと蒸散量を計測・分析し、異なる水ストレス条件におけるAEと蒸散量の関係を究明した。
成果の内容・特徴
- 水ストレスの変化に伴うトマトのAE(発生数h-1)の日変化は、蒸散量の変化と同一ではなかった(図1)。すなわち、蒸散量は灌水直後に大きく、水ストレスの増加に伴って徐々に減少した。一方、AEは灌水直後には大きな値を示すが、時間の経過に伴って減少するものの、水ストレスが増加すると再度増加する傾向があった。
- 種々の分析を行った結果、蒸散量が増加する場合において、AEと蒸散量の増減率の間に相関が高いことが明らかとなった。すなわち、蒸散量の増減率AT(gh-2)は、水ストレスがない場合、AEと正の相関があった(図2)。一方、水ストレスがある場合には、負の相関となった(図3)。
- AEとATとの関係に基づいて、AEは水ストレス指標として使用できることが明らかになった。
成果の活用面・留意点
本研究で得られたAEとATの関係は新しい知見である。水ストレスの一つ指標として施設生産における灌漑制御への応用が期待される。
具体的データ



その他
- 研究課題名:人工環境下における根圏やキャノピ環境と蒸散との相互影響の解明
- 予算区分:特別研究員
- 研究期間:平9~10年
- 研究担当者:邱 国玉、佐瀬勘紀、奥島里美
- 発表論文等:Qiu, G.Y., Okushima, L., Sase, S., Isobe, S., 1997: Detection of crop water stress in tomato with acoustic emissions. 日本農業気象学会関東支部1997度例会講演要旨集(1997.11)