閉鎖性水域における底泥の酸素消費モデル式

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要約

底泥の酸素消費に関する撹拌効果は、浮泥のフロック破壊にともなう溶存酸素の泥粒子内部への拡散促進である。この結果に基づき、溶存酸素濃度、被酸化物質濃度、水温を考慮した底泥の酸素消費に関する基礎モデル式を提案した。

  • 担当:農業工学研究所・水工部・水環境保全研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7546
  • 部会名:農業工学
  • 専門:農村整備
  • 対象:現象解析技術
  • 分類:行政

背景

底泥における汚濁物質の変化の過程(有機物の分解及び被酸化物質等の吸着・脱着・酸化並びに酸化物質の還元等)や、底泥粒子及び底泥間隙水が上層水へ再浮上・溶出し、水質汚濁を発生させる上で、生物・化学的に重要な役割を演じているのが溶存酸素(DO)の動態である。
そこで、DO濃度、被酸化物質濃度、水温、撹拌強度を考えて、各々の効果について室内実験による検討を行い、底泥の酸素消費に関する基礎モデル式を検討する。

成果の内容・特徴

  • 底泥の酸素消費速度は、撹拌強度の増大とともに大きくなる。これは、底泥の撹拌によって、浮泥のフロックが破壊され、溶存酸素が泥粒子内部に拡散されやすくなり、内部の被酸化物質との反応が促進されるためである。(図1)
  • 化学的酸化反応の速度定数の水温依存性を、Arrhenius式における見かけの活性化エネルギーを使って評価すると、静止溶液中における物質の拡散速度のそれと同程度であり、底泥中の酸素消費速度は底泥中の拡散速度と密接な関係がある。(表1)、(図2) 一般に、水環境解析に関するモデルでは、水温依存性にk/k'、=θT-T'を使用する場合が多く、児島湖の底泥では、θ=1.03となる。
  • 底泥の酸素消費に関する基礎モデル式を次のように同定した。 C:水中の溶存酸素量(mg/L)
    C0:酸素消費量で表した被酸化物質量に対する水中余剰酸素量(mg/L)
    κ':化学的酸化反応の速度定数(L/mg/min)
    γ:生物学的酸化反応の速度定数(mg/L/min)

成果の活用面・留意点

提案した酸素消費の速度式は、底泥の撹乱による貧酸素出現に関する問題や水環境解析モデルを構築する際に底泥溶出速度を規定する底泥中の酸素状態を予測するモデルとして適用が可能である。
なお、パラメータは底泥の性状によって異なるため、その同定は室内実験によって行う。

具体的データ

表1 化学的酸化反応の速度定数
式1
図1 異なる撹拌強度と溶存酸素濃度の低下
図2 水温の違いによる酸素消費限度

その他

  • 研究課題名:底泥による酸素消費機構の解明とモデル化
  • 予算区分:経常・依頼
  • 研究期間:平成10年度(平成6~10年度)
  • 研究担当者:白谷栄作、高橋順二、吉永育生・大井節男・鈴木正彦・前田高広・田澤裕之
  • 発表論文等:前田高広・鈴木正彦・大井節男・佐々木洋二(1997):底泥が水質に与える影響、農業土木学会誌、64、351-356
    白谷栄作(1997):農村地域の水質の現状と保全対策、佐賀大学特別講演会