園芸用施設基礎の低コスト・省資源型補強工法

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要約

園芸用施設の柱の基礎部周辺土壌を、セメント系固化材を用いて改良し、ソイルセメント化することにより、現場打ちコンクリート基礎と同等の強度を確保できる。周辺土壌を有効利用することで省資源化され、低コスト化に寄与する。

  • 担当:農業工学研究所・造構部・施設研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7572
  • 部会名:農業工学
  • 専門:農業施設
  • 対象:施工技術
  • 分類:普及・行政

背景

園芸用施設の基礎には、小型のコンクリート製置き基礎を埋め戻したものがよく利用されている。しかし、施設全体が軽量構造であり、台風などの強風時に基礎の浮き上がり、横倒れなどによる倒壊が発生しやすい。しかし、鉄筋コンクリート製の大型基礎は、高単価で、栽培上にも支障が出るためむやみに大きくすることは適当でない。
そこで、置き基礎周囲の埋戻し土にセメント系固化材を混合・撹拌し、ソイルセメント化することにより、基礎部全体の強度を増加させる補強工法の開発を行った。

成果の内容・特徴

  • 現場施工における処理土の配合設計のため、流動性の試験を行い、フロー値(コンクリートの流動性を表す指標。)150~200程度の範囲では、フロー値は加水量にほぼ比例する。また、フロー値は練りまぜ後20分後から急激に低下し40分で150を下回り (図1)、硬化が進む。このことから、施工性が低下しないよう、練りまぜ後20分以内に打設することが望ましい。
  • 添加材配合量と強度の関係の実験を行った結果、ソイルセメント化した土の強度は、ローム土を使用した場合は材令7日と28日の強度差はほとんどないことが明らかとなった(図2)。
  • セメント系固化材によって改良した土を用いて、置き基礎の周囲を埋戻した試験体(図3)を用いて鉛直引抜き実験を行った。この結果、図4の(1)、(2)に示すようにソイルセメント上面の鉛直変位はほぼ一致しており、置き基礎とソイルセメントは一体となって動いていることから、鉛直荷重の大部分はソイルセメントの側面摩擦によって負担されていることがわかった。
  • 図3に示す形状で改良範囲を変えた試験体を用いて、各試験体の初期せん断破壊時までの水平荷重と水平変位との関係を求めた。置き基礎中心幅の4倍のソイルセメント改良基礎と発生土で埋戻した従来型の基礎について比較すると、ソイルセメント補強することにより約4倍の水平耐力が得られた。

今回の実験結果より、コンクリート製置き基礎の周囲をソイルセメント化した場合、大型施設等で使用されている現場打ちコンクリート独立基礎と比較して同等かそれ以上の耐力を有する基礎であることが確認された。

成果の活用面・留意点

  • 園芸用安全施設構造基準等に反映できる。
  • 一定強度を確保するための固化材の配合割合は、図2に示す砂質土とローム土の差のように土質によって大きく異なるので、施工地の土質の把握が必要である。

具体的データ

図1 フロー値の経時変化
図2 圧縮強度の経時変化
図3 引抜き及び引張り実験に用いた補強基礎の形状
図4 鉛直引抜き荷重と鉛直変位

その他

  • 研究課題名:園芸用施設の省資源型基礎の開発
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成10年度(平成9年~10年)
  • 研究担当者:豊田裕道、森山英樹、浅野 勇
  • 発表論文等:1.ソイルセメントを用いた改良土の材料特性について、農業施設学会大会講演要旨、1998.
                      2.ソイルセメントの実大実験について、農業施設学会大会講演要旨、1998.