ため池改修における底樋の設計手法

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

ため池の付帯構造物の中でも、底樋と呼ばれる取水設備は、堤体の弱部となる場合が多い。ここでは、底樋に関する技術的課題について検討を行い、ため池改修の実状にあった設計手法を提示する。

  • 担当:農業工学研究所・造構部・土質研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7575
  • 部会名:農業工学
  • 専門:用排水
  • 対象:計画・設計技術
  • 分類:普及・行政

背景

ため池の取水設備である底樋は、堤体の弱部となる場合が多いことが知られている。底樋は、堤体、基礎地盤の沈下に耐え、追随し得る構造とすることが求められる。本研究では、ため池の災害調査に基づき得られた知見を踏まえて、底樋改修に必要な推定沈下量を求めることを含めた基礎地盤の調査フロー、簡便な概略沈下量の算定法、及びそれらに基づいた底樋の基礎形式選定法等、ため池改修の実状にあった設計手法を提案する。

成果の内容・特徴

  • 被害を受けたため池の詳細な現地調査に基づき、底樋改修に必要な推定沈下量を求めることを含めた基本的な基礎調査は、 図-1に示すようなフロー図により行える。
  • 図-1の概略沈下量算出のフロー図について図-2に示す。
    ため池改修で一般的に行われている調査・試験の範囲内で、基礎地盤が粘性土(海成粘土、陸成粘土)及び砂質土の場合の標準貫入試験によるN値、液性限界WL、塑性限界WPと、間隙比e0、圧縮指数Ccとの相関関係より、概略の沈下量を推定できる。沈下量Sは、次の式より求められる。
  • 図-1の推定沈下量の検討による底樋の基礎形式選定図を図-3に示す。
    なお、数カ所の災害事例から、10cm程度の沈下量であれば底樋に損傷が生じていないこと、および、底樋の類似構造物である樋門・樋管設計の手引き(建設省東北地方建設局、関東地方建設局他)も参照し、最大沈下量が概ね10cm以内であれば直接基礎として選定できるものとした。

成果の活用面・留意点

本成果は、設計指針「ため池整備」(H11年度制定予定)に反映された。
沈下量の算出に当たっては不撹乱土で土質試験を行い、そのデータで計算を行う。

具体的データ

式1
図1 底樋改修時の調査フロー図
図2 概略沈下量の算出フロー図
図3 底樋の基礎形式剪定図

その他

  • 研究課題名:ため池の付帯構造物に関する設計手法の開発
  • 予算区分:経常・依頼
  • 研究期間:平成10年度(平成9~10年)
  • 研究担当者:中島正憲、堀 俊和、谷 茂、毛利栄征
  • 発表論文等:中島正憲、谷 茂:底樋設計の変遷等について、水と土110号、pp.16~28、1998
    中島正憲:ため池の災害事例と底樋設計の課題について、農業土木学会大会講演要旨集、pp.554~555、1998
    中島正憲、毛利栄征:ため池災害と底樋設計の検討、農業工学研究所技報、第197号、1999