作物の影響を考慮した畝部の土壌侵食強度特性
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要約
畝立てされたキャベツ畑で発生する土壌侵食量の評価に必要となる畝部の土壌侵食量を算定するために、畝部の土壌侵食強度と降雨強度、畝部の横断勾配およびキャベツの植生との関係を人工降雨実験により明らかにし、キャベツの生育段階ごとに畝部の土壌侵食強度を算定する式を示した。また、野外試験を行ってこの式の有効性を示した。
- 担当:農業工学研究所・地域資源工学部・土地資源研究室
- 代表連絡先:0298-38-7671
- 部会名:農業工学
- 専門:資源利用・農地整備
- 対象:現象解析技術
- 分類:研究
背景
高原地域に分布する傾斜畑では、夏の冷涼な気候を生かしてキャベツなどの野菜が大規模に生産されているが、これらの畑では豪雨時の土壌侵食によって大量の作土を損失する。こうした農地の保全対策を行うためには、計画設計段階で一降雨ごとの短期間に発生する土壌侵食量を評価する必要があるが、既存のUSLEでは対応が困難である。
ここでは、畝立てしたキャベツ畑における短期間の土壌侵食量評価に資するため、畝部から畝間部へ流入する土壌侵食量をキャベツの生育段階ごとに算定することを目的に、人工降雨実験等を行って畝部の土壌侵食量と降雨強度、畝部の横断勾配およびキャベツの植生の関係を検討した。
成果の内容・特徴
- 人工降雨を用いた土壌侵食実験(図1)によって、黒ボク土の畝部で発生する土壌侵食強度と降雨強度の関係を確認し、さらに畝の横断勾配ならびにキャベツの植生との関係を調べた(図2)、(図3)。これらの関係は次式で表される。
Di=KiI2SfC
ここで、Diは畝部の土壌侵食強度(kg m-2s-1)、Kiは土壌の受食性係数(kgsm-4)、Iは降雨強度(m s-1)、Sfは畝の横断勾配の影響を表す係数(Sf=0.0145S+0.228、Sは畝の横断勾配(%))、Cはキャベツの植生の影響度を表す係数(C=-0.89cov+1.0、covは植被率)である。上式から、キャベツの各生育段階における畝部の土壌侵食量が算出される。
- 農業工学研究所内の野外試験区(図4)での観測結果から、降雨強度Iとして1分および5分間降雨強度を用いた場合に上式の適合度が高いことが分かった。また、黒ボク土の受食性係数Kiは、1分間降雨強度を用いた場合8.29×105(kg s m-4)と推定された。
成果の活用面・留意点
上式は畝間部での土壌侵食および土砂輸送の評価式とあわせて用いることで、キャベツの各生育段階における畝立て圃場の土壌侵食量を評価できる。このことは、土地資源評価の確立に資するとともに、農地保全対策等の計画設計に必要な基礎的データを与えることにつながる。
具体的データ




その他
- 研究課題名:農地の侵食ポテンシャル評価に関する研究
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成11年度(平成7~11年)
- 研究担当者:塩野隆弘、奥島修二、福本昌人、高木 東(現水文研)、古谷保(現農地整備部)、上村健一郎(現企画科)、小倉 力(現国際農研)
- 発表論文等:1)塩野隆弘・高木 東・上村健一郎、自然降雨と人工降雨の雨滴粒径分布について、平成9年度農土学会大会講要集、740-741、1997
2)塩野隆弘・高木 東・小倉 力・上村健一郎、畝部の土壌侵食に対するキャベツの影響、平成10年度農土学会大会講要集、462-463、1998
3)塩野隆弘・高木 東・小倉 力・上村健一郎、畝部の土壌侵食に対するキャベツの植生の影響度、農土論集、204、13-20、1999