小型漂流式ブイを用いた流れと水質の観測
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
汽水域の流れと水質を容易に高精度に観測するため開発したディファレンシャルGPS(DGPS)を装備した小型漂流式ブイを利用し、淡水と海水などが合流する流れの塩分濃度や濁度の変化を高精度で、容易に観測できることを実証する。
- 担当:農業工学研究所・水工部・河海工水理研究室
- 代表連絡先:0298-38-7567
- 部会名:農業工学
- 専門:情報管理
- 対象:計測・探査技術
- 分類:普及
背景
河口域は淡水と海水が混合する汽水域であり複雑な水理現象が生じている。ここでは、河口から沿岸域にかけての広い水域での流れや水質の観測を行うために開発した小型漂流式ブイを利用し、流況と同時に定点観測では得にくい流れに沿った水質観測を行い、汽水域等での水質の観測にも有効な観測手段であることを実証する。
成果の内容・特徴
- 本装置は、DGPS、濁度計、塩分濃度計、パソコンを搭載したブイを漂流させ、ブイの位置を1m以内の誤差で測位し、流れに乗って移動したブイの位置(緯度・経度)、水質(塩分濃度、濁度)をパソコンに取り込み、流況と水質を観測できる装置である。
- 本装置を利用して、洪水後に防潮水門から海域に排出される流れの測定を行った。
(1) 図1は、防潮水門から排水された淡水が海域に流出した際のブイの軌跡を示している。水門中央部からの流れが周辺部より速いことや流れが拡散していく様子がわかる。
(2)図2は図1で示した流れの流速の変化を示しており、流れの中央部に配置したブイと周辺に配置したブイの流れ速度の変化の様子が捉えられている。
(3)図3は、流れの主流に乗ったブイBで観測された濁度(水深50cm)と塩分濃度(水深40cmと2m)の時間的変化である。沖への流下とともに濁度が徐々に低下していく状況、表層の塩分濃度が海水に近くなっていく状況がわかる。
成果の活用面・留意点
- 本装置は、定点観測では多数の観測点が必要となる海水と淡水など2種類の流れが混合する場のフロントの移動に追随した水質の観測が可能となり、複雑な流れの解明に有効な観測手法になる。
- ブイの現在位置を陸部等から携帯電話で確認するシステムや30時間の連続観測が可能なように改造済みで、洪水時や高波浪時など危険な時でも観測可能となり危険な作業の改善に貢献できる。
具体的データ



その他
- 研究課題名:河口閉塞防止に対する密度流の解析技術の開発
- 予算区分:経常(依頼)
- 研究期間:平成11年度(平成10~12年)
- 研究担当者:藤井秀人、桐博英、中矢哲郎
- 発表論文等:1)藤井秀人、桐博英、中矢哲郎、漂流式GPSブイによる流況・水質観測装置の開発、農土論集204、99-106(1999)
2)桐博英、藤井秀人、中矢哲郎、小型浮遊式ブイを用いた流況観測システム、平成10年度農業工学関係研究成果情報、27-28(1999)