浅埋設パイプラインの浮上対策方法

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要約

地中に埋設されるパイプラインを対象としてパイプの押上げ実験を実施し、ジオグリットや砕石を用いた埋設方法は押上げ抵抗力の改善効果が大きく、パイプを浅く埋設した場合でも約2.4倍の抵抗力を発揮することを確認した。

  • 担当:農業工学研究所・造構部・土質研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7574
  • 部会名:農業工学
  • 専門:基幹施設
  • 対象:計画・設計技術
  • 分類:研究

背景

地中に埋設されるパイプラインは地下水位の上昇によって浮力が作用する場合がある。この上向きの押上げる力に対する抵抗力はパイプに作用する鉛直土圧によって確保されている。このような土被りを深くとってパイプの浮上に抵抗する方法は、施工費の増大を招くだけでなくパイプの浅埋設化に障害となっており新たな工法の開発が期待されている。
このような背景から本研究ではパイプラインを浅く埋設するための工法を開発することを目的として、対策方法の有効性確認と挙動のメカニズムの確認、設計方法の提案を行った。

成果の内容・特徴

  • パイプの浮上防止を目的として、押上げ力を受ける場合の限界抵抗力を室内実験によって求め、パイプラインを浅く埋設するための工法の開発を行った。 (図1) (表1)
  • パイプの押上げによって発生する周辺地盤のすべり面は、土被りがパイプ直径程度の比較的浅い埋設状態では鉛直すべり面に近い曲線状である。(写真1)
  • 既往のアンカーの押上げ抵抗力予測式(Vermeerモデル)が浅埋設のパイプラインに適用可能であることが明らかとなった。(図2)
  • 埋設深がパイプ直径の約2倍(2D)の状態では砕石とグリッドによる対策方法(CASE_4)は無対策に比べて限界抵抗力で1.5倍程度、残留状態では4倍程度の改善効果がある。(図3)
  • (CASE_4)の対策方法で埋設深がパイプ直径の約半分(0.5D)の状態では限界抵抗力で1.2倍程度、残留状態では2.4倍程度の改善効果がある。
  • 無対(CASE_1)策の場合、限界抵抗力は、変位(δ)が5mm以下で発揮されるが対策工を施した場合には、限界抵抗力は大きな変位(押上げ量)まで維持される。(図4)

成果の活用面・留意点

実際の大口径のパイプラインに適用する場合には砕石層の変形を抑制するために十分な砕石層の厚みを確保できるように留意する必要がある。砕石層の変形はその剛性に依存しているので適切な層厚を確保し十分な締め固めが不可欠であるが、砕石層の規模についてはパイプの口径や作用する土圧などの影響を考慮しなければならない。

具体的データ

表1 実験条件(対策方法断面図)
写真1 すべり面の発達状況
図1 実験土槽の断面図
図2 押し上げ抵抗力と土被りの関係
図3 押し上げ抵抗力と変位の関係
図4 限界抵抗力と変位の関係

その他

  • 研究課題名:地震時地中構造物の安全性に関する評価手法の開発
  • 予算区分:経常(交流共同研究)、依頼
  • 研究期間:平成11年度(平成9年~12年)
  • 研究担当者:毛利栄征、松島健一、堀俊和、民間研究組合
  • 発表論文等:1)毛利栄征、河端俊典:埋設パイプの浮上に伴う限界抵抗力に関する実験的検討、農業土木学会論文集、205号、2000.