中山間地域住民の地域環境に対する意識の相違による整備の方向
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要約
中山間地域住民の地域環境に対する意識は、同一の自治体内でも立地条件により異なる。これら立地条件別の地域環境に対する意識の相違に基づいて整備方向を検討することが、地域環境の向上に必要である。
- 担当:農業工学研究所・農村整備部・集落整備計画研究室
- 代表連絡先:0298-38-7668
- 部会名:農業工学
- 専門:農村整備・農村計画
- 対象:計画・設計技術
- 分類:研究・行政
背景
地域環境整備の方向性を検討するに当たっては、地域生活主体である住民の意識を広く汲み取ることが不可欠の要因である。これまで中山間地域は、同質の地域として扱われがちであったが、細分化した地域区分によって環境に対する住民意識の相違を把握することが重要である。そのため、立地条件属性と地域環境に対する住民意識との関係を把握・反映した整備方向の検討を行う。
成果の内容・特徴
- 中山間地域の代表的事例地として長野県高森町を選定し、地域環境に関する意識調査を行い、 図1のように、立地条件属性別(中心的地区(中心2地域)、中間的地区(3地域)、辺地的地区(山麓側2地域))に分類した結果、意識の相違が次の点にみられた。
1) 地域環境に変化を感じるものは、1中心的地区では道路の改修・新設、2中間的地区では道路の改修・新設、大形施設の建設、圃場の転用、3辺地的地区では圃場の転用であった(図2)。
2) 地域環境や景観の良さを感じているものは、1中心的地区では、田畑・果樹園、山林、動植物に多く、若干ではあるが公園・広場、遊べる水辺環境もみられる。2中間的地区では、田畑・果樹園、公園・広場に中心的地区と同様に多く、つづいて山林、町並みや家並みであるが、動植物に関しては極めて少ない。3辺地的地区では、特に田畑・果樹園、山林、動植物に多かった他、町並みや家並みもあった(図3)。
3) 環境改善に関心のあるものは、1中心的地区では特に、騒音や空気、他に自然・農地、公園・施設であり、2中間的地区では特に、公園・施設、他に自然・農地、土地利用、3辺地的地区では特に、自然・農地、山林、他に騒音や空気であった(図4)。
- 以上のことから、地区タイプ別に特に関心があるものは、1中心的地区:道路、住環境(騒音・空気)、公園や施設、動植物、水辺環境、2中間的地区:公園や施設、町並みや家並み、水辺環境、土地利用、3辺地的地区:農地、山林、動植物である。これらから、地区タイプ別の検討すべき整備方向は、表1のとおりである。
- 中山間地域の1市町村の中でも地区による地域環境意識の相違があり、立地条件により異なった整備の方向が必要である。
成果の活用面・留意点
地域環境整備に係る調査計画分野で住民意識調査の手法に活用できる。立地条件属性を決定するためには、地域別の社会指標を考慮する必要がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:中山間農業集落の環境特性の解明とそのアメニティ評価・整備手法の検討
- 予算区分:経常・依頼
- 研究期間:平成7~11年度
- 研究担当者:小嶋義次、岡本佳久、小林宏康、筒井義冨
- 発表論文等:1)小嶋義次、小林宏康、筒井義冨、岡本佳久:中山間地域住民の環境構成要素の評価実態とその特性、農業土木学会講演要旨集、12-14、1999
2)小嶋義次・岡本佳久・筒井義冨・山本徳司:中山間農業集落居住者の環境意識と整備方向の検討-長野県高森町を事例として-:農業工学研究所技報、199、印刷中