ORP屈曲点による硝化完了時点の検出とこれを用いたばっ気の自動制御
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要約
ばっ気中の溶存酸素濃度を一定値に制御した場合、硝化の完了とORP屈曲点が一致することを見い出した。またこれを用いて,ばっ気量を節減しながら,有機物及び窒素除去のために無駄なくばっ気を行える自動制御システムを開発した。
- 担当:農業工学研究所・農村整備部・集落排水システム研究室
- 代表連絡先:0298-38-7535
- 部会名:農業工学
- 専門:農村整備
- 対象:計画・設計技術
- 分類:研究
背景
農村地域における農業用水や湖沼などにおいては、生活排水の流入により富栄養化が進んで問題となる場合がある。一方農業集落排水は小規模であることから、処理水の質・量ともに時間的変動が大きく、また管理者は施設に常駐しない場合が多いなどの制約がある。
本研究では、これら条件下においても低コストで優れた処理性能を安定して発揮できる自動制御システムを開発した。
成果の内容・特徴
- ばっ気、非ばっ気時間を固定した長時間ばっ気方式(連続流入)において、ばっ気中におけるDO(溶存酸素濃度)を一定値(2.0mg/l)に制御した場合、硝化の完了時にORP(酸化還元電位)曲線上に傾きが0に近くなる点(屈曲点 P1)が現れることを見い出した。(図1)
- これを利用し,ばっ気時間中のDOを一定値に制御(2.0mg/l)し、かつ硝化が終了した時(P1)と脱窒が終了した時ORP曲線上に現れる屈曲点(P2)を検出し、ばっ気を停止及び開始する自動制御システムを開発した。本システムは硝化終了時点を的確に検出し、ばっ気を停止するのが最大の特徴である。(図2)
この自動制御システムを用いた結果、有機物や窒素除去のために必要十分なばっ気量を確保しつつ無駄なばっ気量を減らし、かつ高い窒素除去率(93~96%)と高い BOD(生物化学的酸素要求量)除去率(98%~99%)を示すことができた。
- 流入水の量や水質の変動、すなわち流入負荷に変動を与えた場合でも、BODで99%、窒素で96%、COD(化学的酸素要求量)で95%、TOC(有機性炭素)で97%の除去率を示し、安定して良好な処理水質を得られることがわかった。本自動制御システムが流入負荷変動によく対応し、ばっ気時間と非ばっ気時間を適切に確保していることが示された。
成果の活用面・留意点
本研究により、ORPを用いた自動制御システムが経済性と高度処理性能をあわせ持つことが示されが、今後実スケールでのプラント実験による検証が必要と考えられる。
具体的データ


その他
- 研究課題名:自動制御による集落排水処理の機構解明
- 予算区分:経常・STA
- 研究期間:平成12年度(平成10~12年)
- 研究担当者:金瀅中(韓国建国大学)、端憲二、本間新哉、柚山義人(JICA)
- 発表論文等:1)端憲二、金瀅中、本間新哉:DO定値制御間欠曝気におけるORPの挙動と処理性能-集落排水処理の自動制御システムに関する研究I-、農業土木学会論文集、第207号、49-58、1999
2)金瀅中、端憲二、本間新哉:DO定値制御及びORP屈曲点検出による汚水処理の自動制御-集落排水処理の自動制御システムに関する研究II-、農業土木学会論文集、第207号、59-67、1999
3)「汚水処理における窒素の硝化完了時点の検出方法及び窒素除去のための最適ばっ気法」として特許出願(特願2000-180334号)