NaHCO3型深層地下水のラドン濃度特性
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
硬度-重炭酸-ラドン濃度ダイアグラムにより沖積低地などの平地地下水,岩盤山地の地形に沿って流れる浅層地下水と山地の深層地下水を区分できる。深層地下水(NaHCO3型)のラドン濃度は,電気伝導度は高いにもかかわらず極低濃度で平衡に達していることを明らかにした。
- 担当:農業工学研究所・地域資源工学部・地下水資源研究室
- 代表連絡先:0298-38-7200
- 部会名:農業工学
- 専門:資源利用・環境保全
- 対象:現象解析技術
- 分類:研究
背景
地層の間隙を流動する地下水のラドン平衡濃度(涵養後3週間以上経過したラドン濃度)は、地質のラジウム含有量、粒子サイズ、間隙率等の因子で規定されている。しかし,地層ごとの平衡濃度を知る方法は、確立されていない。ラドンのトレーサーとしての有効性を高めるために、帯水層の違いによるラドン平衡濃度の影響因子を明らかにし,評価方法を確立する必要がある。ここでは,様々な地域の地下水のラドン濃度を帯水層毎に分類し,扇状地の平地地下水と中生代堆積岩類中の山地地下水とのラドン濃度の違いを検討した。
成果の内容・特徴
- 帯水層の違いによる平均ラドン濃度
表1に10調査地区の地下水のラドン濃度を示した。琉球石灰岩にはラジウムは殆ど含まれていないため,最も低い平均ラドン濃度0.6Bq/lを示す。ラジウムが多量に含まれる花崗岩類のラドン濃度は,58.1Bq/lと最も高い。
- 平地の地下水のラドン濃度
砂礫層から構成される平地地下水でも,堆積物を構成する砂・礫の種類により5.1~15.6Bq/lまで変化するが,ラドン濃度は電気伝導度と正の相関関係がある。
- 山地の地下水のラドン濃度
図1に福井県今庄町日野川桝谷の地質断面図と地下水のヘキサダイアグラムを示す。地質調査から谷に断層が発達しているのが明らかになっている。中生代堆積岩類からなる山地地下水は,地表面に沿って流れる浅層地下水(CaSO4型)と谷部を上昇する深層地下水(NaHCO3型)から構成されている。硬度-重炭酸-ラドン濃度グラフに三原扇状地,日野川の地下水をプロットすると(図2),三原扇状地,浅層地下水は,硬度-重炭酸が増加するとラドン濃度も増加しているが,深層地下水はイオン濃度が増加しても,ラドン濃度が増加しないことが明らかになった。
成果の活用面・留意点
第三紀泥岩層のNaHCO3型深層地下水でも高イオン濃度地下水のラドン濃度は低濃度であった。成因については今後さらに検討する必要がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:帯水層の違いが地下水中の環境同位体の濃度に及ぼす影響の評価
- 予算区分:経常、依
- 研究期間:平成12年度(平成10~14年)
- 研究担当者:今泉眞之、二平 聡
- 発表論文等:1)今泉真之他:地下水のラドン濃度に及ぼす影響因子について理工学における同位元素研究発表会要旨集,p100,2000.
2)今泉真之他:不完全貫入井戸周辺の揚水による地下水流動,農業土木学会講演要旨集,p332-333,2000.