GISによる圃場形状を反映したUSLE地形係数の算定法
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要約
土壌流亡量の広域的な評価を行うために、地理情報システム(GIS)を用いて圃場の土壌流亡予測式(USLE)の地形係数を圃場形状の実態に合わせて算定する手法を開発した。これを用いて、各圃場の地形形状や栽培管理実態を反映した土壌流亡量を流域レベルで算出できる。
- 担当:農業工学研究所・地域資源工学部・土地資源研究室
- 代表連絡先:0298-38-7671
- 部会名:農業工学
- 専門:資源利用
- 対象:計画・設計技術
- 分類:行政
背景
農村地域における土地資源評価の主要な要素に土壌侵食量がある。これまでの土壌流亡予測式(USLE)を用いた流域レベルの土壌流亡量の計算は、計算メッシュと畑圃場形状が一致しないため、地形係数の評価が不十分で、畑圃場ごとの栽培管理の実態を組み込むことが困難であった(図1)。このため、地理情報システム(GIS)を用いて畑地の耕区ごとのUSLEの地形係数を圃場形状の実態に合わせて算定する手法の開発を行った。さらに、これを用いて、畑地帯流域を対象に畑地の土壌流亡量の算定事例を示した。
成果の内容・特徴
- 地理情報システム(GIS)を用いた土壌流亡予測式(USLE)の地形係数の算定法:GISを用いて、1/2,500地形図の畑耕区の区画形状と数値地図50m(標高)のメッシュ標高値から各畑耕区の地形を板状斜面にモデル化し、これより斜面長と斜面勾配を計算して各耕区におけるUSLEの地形係数を算出する(図2)
- 土壌流亡量の計算:耕区単位での地形係数の算出が可能となったので、耕区ごとに栽培作物、圃場の保全・管理状況を反映させた流亡量の計算を行うことができる。これにより、畑圃場の集合した団地や畑地帯流域において圃場ごとの流亡量の計算が可能である。
- 畑地帯流域の土壌流亡量の算出事例:現地畑団地の観測土砂堆積量を用いてUSLEの土壌係数を同定した。この土壌係数と上述の手法を用いて、各畑地圃場(圃場数11,585筆、合計面積3,035ha)を含む畑地帯流域を対象に、土壌流亡量を算定した結果、畑圃場1haあたりの土壌流亡量は0.1~48.2t y-1となった(図3)。
成果の活用面・留意点
土壌流亡量の計算式にUSLEを用いているため、各耕区で算出される値は年平均土壌流亡量である。豪雨などにより短期間に発生する土壌流亡量の計算には適用できない。
具体的データ



その他
- 研究課題名:耕作形態や保全管理別の農地の侵食ポテンシャルの定量的評価
- 予算区分:環境研究(貿易と環境)
- 研究期間:平成8~12年
- 研究担当者:塩野隆弘、奥島修二、福本昌人、上村健一郎(現企画科)、小倉 力(現国際農研)、古谷 保(現JICA)、高木 東(現水文研)
- 発表論文等:1)塩野隆弘・上村健一郎・奥島修二・福本昌人:畑地帯における土壌侵食量の広域推定、H12年度農土学会大会講要集、516-517、2000.
2)塩野隆弘:地理情報システムを用いた土地資源評価事例、農業土木、608、32-33、2000.
3)Shiono, T., Kamimura,K., Okushima, S., and Fukumoto M.:Assessment of soil loss at local scale using the USLE and GIS for farmland conservation plannig: A case study, Proceeding of the International Seminor on Current State and Problems of Land Resource Degradation, 40-48, 2000.