サボニウス風車の動力利用における出力特性

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

小型サボニウス風車で揚水ポンプを作動する場合、風速は3m/s以上でポンプ を駆動させることができる。エネルギー変換効率は、周速比が0.25の条件で最大0.05 である。トルク係数は周速比0.25以上で低下する。

  • 担当:農業工学研究所・地域資源工学部・地域エネルギー研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7507
  • 部会名:農業工学
  • 専門:資源利用
  • 対象:計画・設計技術
  • 分類:研究

背景

農業における電動機や原動機によらない小規模動力源として利用する風車としては、構造が単純で騒音を発生せず、強風時にも回転数が過大にならず安全性が高いサボニウス風車が適している。同風車の出力特性を現地試験によって解明し、効率的な運転を行うための条件を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 本情報は、高さ5mの架台に設置した、直径1.5m、高さ1mのローターを2段重ねたサボニウス型風車(図1)でウイング型ポンプを駆動し、揚程1.7mの揚水を行う試験により得られた結果である。ローターはポリカーボネートで製作することにより、全鋼製に比べて24%の軽量化になる。風車の回転はクランク機構で直線往復運動に変換され、ポンプが駆動される。
  • ポンプはおよそ3m/s以上の風速で駆動でき、現地試験では10日間で39.1m3の揚水量が得られた(図2)。
  • 風車の回転軸をクランクに直結した場合と歯車比1:1.5の減速をした場合には、図3に示すように、風車のエネルギー変換効率を表すパワー係数は周速比(ローター端の回転速度と風速との比)が0.25前後で最大0.05になる。一方、歯車数比1.5:1の増速をした場合は風車への負荷が増大して回転数が減る結果となり、パワー係数は低下する。
  • 風車の軸トルクと風による理論トルクとの比を表すトルク係数は図4に示すように、周速比0.25まではほぼ一定で、それ以上では減少する。
  • パワー係数、トルク係数ともに大きな状態で運転する条件は周速比0.25であり、そのための負荷の条件は下式で求めることができる。
    風速V(m/s)、ローター直径D(m)、ローター面積A(m2)、空気密度ρ(kg/m3)とすると、
    最適負荷トルク=ρ×A×D×V2/4×0.25 (N・m)
    回転数=60×V/π/D×0.25 (rpm)
    負荷トルクが大きい場合には減速機を用いることによって、駆動回転数は減少するが最適周速比における運転が可能になる。

成果の活用面・留意点

サボニウス風車はプロペラ型風車に比べるとパワー係数は小さいが大きなトルクが得られるので、小規模な揚水、汚水の撹拌処理などの無電源運転の用途に適する。

具体的データ

図1 サボニウス風車
図2 現地試験における風速と揚水流量
図3 周速比とパワー係数との関係
図4 周速比とトルク係数との関係

その他

  • 研究課題名:小規模利用のための風車動力変換技術の開発
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成12年度(平成10~12年)
  • 研究担当者:奥山武彦、小綿寿志、後藤眞宏(現北農試)、藤森新作
  • 発表論文等:奥山武彦ら、小型風車を用いた撹拌曝気装置の開発、農工研技報、198、33-42、2000.