暗渠疎水材の不飽和透水パラメータの決定方法

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要約

暗渠疎水材の不飽和透水パラメータを決定するために、簡単な室内透水試験装置を開発した。その試験装置を逆解析すれば、疎水材の不飽和透水パラメータを高精度に決定でき、従って、飽和状態以外でも、暗渠周辺の水移動解析が可能となる。

  • 担当:農業工学研究所・農地整備部・水田整備部研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7555
  • 部会名:農業工学
  • 専門:農地整備
  • 対象:計測・探査技術
  • 分類:研究

背景

近年、水田の汎用化、畑利用化が進んでおり、暗渠疎水材が常に飽和状態にあるとは限らない。したがって、暗渠を通した水移動を解析するためには、土壌および暗渠疎水材の不飽和透水特性を考慮しなければならない。土壌の不飽和透水パラメータの測定手法は確立されているが、暗渠疎水材の不飽和透水パラメータの測定手法は確立されていない。本研究では、暗渠疎水材の埋設厚の実態に合わせて不飽和透水パラメータを決定する室内透水試験装置を開発し、その試験結果を逆解析して暗渠疎水材(籾殻)の不飽和透水パラメータを決定した。

成果の内容・特徴

  • 一定の荷重をかけて排水量を計測できる不飽和圧縮透水試験器(図1)を開発した。不飽和透水パラメータの決定方法を以下に示す。まず、一定の荷重条件で籾殻(新材)を充填し、飽和後、下部水頭を試料上面から基準面まで一気に(一段排水試験)、または段階的に(多段排水試験)下げ、積算排水量の経時変化を計測する。次に、この計測データを用いて、有限要素法による逆解析(Hydrus2d Ver.2)を行い、不飽和透水パラメータ(van Genuchten-Mualem式)を決定する。この方法は、土の不飽和透水試験であるマルチステップ法と類似であるが、空気の加圧を必要としない点で試験が簡便かつ迅速である。なお、試料の高さは、暗渠疎水材の標準的な埋設厚(50cm程度)に合わせた。
  • 積算排水量の経時変化(図2)において、解析値は実測値と良く一致した。本手法によれば、排水特性を表す不飽和透水パラメータを、高精度に決定できる。
  • 決定されたパラメータ(表1)および水分特性曲線(図3)において、試験条件(一段排水試験と多段排水試験)による違いは小さく、同等の結果が得られた。したがって、試験および解析が容易な一段排水試験が合理的である。

成果の活用面・留意点

ここでは、籾殻(新材)について試験を行いその有効性を確認したが、類似の疎水材や原位置の籾殻についても適用が期待される。

具体的データ

表1 試験方法および不飽和透水パラメータの決定結果
図1 実験装置図
図2 積算排水量の経時変化
図3 水分保持特性曲線の決定結果

その他

  • 研究課題名:個々の圃場特性を考慮した暗渠設計技術の開発
  • 予算区分:経常(特別研究員)
  • 研究期間:平成12年度(平成11~13年)
  • 研究担当者:井村英樹、谷本岳、藤森新作
  • 発表論文等:井村英樹、藤森新作、籾殻の不飽和水分移動特性について、 農土学会講要、652-653、2000.