風洞実験におけるPIVの精度と温室内気流解析への適用

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要約

風洞実験におけるPIV(Particle Image Velocimetry)の気流速の計測誤差は、平均3~5%であり、温室内気流の解析に有効である。PIVにより、フェンロー型温室や屋根開放型温室の自然換気時の気流分布が解析できる。

  • 担当:農業工学研究所・農地整備部・農業施設環境制御研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7655
  • 部会名:農業工学
  • 専門:農業施設
  • 対象:計測・探査技術
  • 分類:研究

背景

温室内の気流分布は環境制御の重要な要因の一つである。従来、気流分布の解析手法には、煙による可視化や熱線風速計による計測などの方法が用いられているが、前者は気流速が計測できず、後者は多点での計測が必要であるなどの難点がある。PIV(Particle Image Velocimetry)は、微小なトレーサ粒子をカメラで撮影し、異なる時間での粒子の分布パターンの類似性から2次元断面における流速ベクトル分布を計測する新しい手法であり、温室内気流のより詳細な解析が期待できる。そこで、風洞実験におけるPIVの応用や精度を検討し(図1)、温室の自然換気時の気流分布解析への有効性を検討する。

成果の内容・特徴

  • 本情報は、大型風洞内に粗度長10mmに相当する自然風と相似な風速分布を形成し、熱線風速計との比較でPIVの精度を検討し、また、PIVを自然換気時の温室内気流分布の解析に適用した結果である。
  • PIVによる気流速の計測誤差は風速や乱れの強度に依存するが、可視化粒子の濃度や分布、レーザ光の配光などの改善により、計測誤差を平均3?5%に抑えられる。
  • PIV計測によれば、自然換気時のフェンロー型温室では、外気は大半が最も風上側の天窓から流入し、風下側の天窓から流出する(図3)。
  • PIV計測によれば、屋根開放型温室では、外気は風下側スパンの屋根・側壁面に沿って流入し、風上側スパンから流出する(図3)。結果として、室内に大きな逆流が発生し、床面付近の気流速は特に大きくなる。

成果の活用面・留意点

PIVは2次元断面での計測が基本であり、3次元での計測には垂直・水平面の合成等の手法が必要となる。PIVの精度は、トレーサ粒子の大きさや濃度、計測対象面における配光、風速や気流の乱れに依存し、計測条件に応じた適切な設定が必要である。温室のみならず畜舎等の気流分布の解析にも適用が可能である。

具体的データ

図1 風洞におけるPIVシステムの構成と設置
図2 基準風速(風洞床面上270mm)3.5,4.4,6.3m/sに対するPIV(P)と熱線風速計(A)の計測値の比較
図3 PIVによるフェンロー型温室と屋根開放型温室の気流分布の計測結果

その他

  • 研究課題名:CFD(数値計算流体力学)の手法を用いた多連棟温室の自然換気の予測と風洞実験による検証
  • 予算区分:STAフェロー・経常
  • 研究期間:平成12年度(平成11~13年)
  • 研究担当者:In-Bok Lee、佐瀬勘紀、奥島里美、石井雅久
  • 発表論文等:In-Bok Lee et al., Application of PIV system to wind tunnel test for greenhouse ventilation characteristics and comparison with CFD model, 2000年度農業施設学会大会講演要旨, 76-77, 2000.
                      In-Bok Lee et al., Prediction of natural ventilation of multi-span greenhouses using CFD techniques and its verification with wind tunnel test, ASAE Paper No. 005003, 2000.