中山間地域用水路の防災施設としての無動力止水ゲート

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要約

洪水時用水路内の水位が上昇した場合、自動的にゲートが閉塞し、余水吐から洪水流を放流させ、洪水後用水路内の水位が低下すると再び自動的にゲートが開く無動力止水ゲートを考案し室内水理実験により、水理特性を明らかにした。

  • 担当:農業工学研究所・水工部・水路工水理研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7566
  • 部会名:農業工学
  • 専門:用排水
  • 対象:計画・設計技術
  • 分類:研究

背景

中山間地域においては、過疎化、高齢化が進み地域の水土保全管理機能が低下している。降雨時及び洪水期の水門、ゲート操作については危険で、かつ多大な管理労力が要求される。このため洪水時に水路内水位が上昇すると無動力ゲートが作動し、受益地、集落への洪水の流入を防ぐ、無動力止水ゲートを考案し、その水理特性を室内模型実験により明らかにした。

成果の内容・特徴

  • 無動力ゲートは水路内の水位が上昇すると、流水により無動力でゲートが閉塞し、用水路内の洪水流を放水路から放流するものである( 図1)。
  • 開方向のモーメントを発生させるカウンターウエイトと、水路内の水位上昇、流速の増加によって生じる閉方向のモーメントとのバランスで、ゲートが開閉する(図2,3,4)。
  • 作動水深h1(ゲート閉塞開始時の水位)とh2(ゲート開放開始時の水位)はカウンターウエイトにより制御することができる。
  • ゲートが閉塞するときは、主として流れが閉方向のモーメントを発生させる。カウンターウエイトの開方向のモーメントより、流れによる閉方向のモーメントが上回った時点でゲートが閉塞を開始しする(図5)。また、静水圧を主とする閉方向のモーメントが開方向のモーメントを下回った時点で再び開放する(図6)。その関係は(1)、(2)式で表すことができる。本実験ではα=2.1、β=0.7を得た。
    ゲートが閉塞するとき(1)
    ゲートが開放するとき(2)
    Mo:カウンターウエイトによる開モーメント(N・m)、α:実験係数(閉塞時)、
    H:開口部長(m)、ρ:水の密度(kg/m3)、v:ゲート閉塞開始時の流速(m/s)、
    β:実験係数(解放時)、a:扉体面積(m2)、θ:扉体と水路底の角度、L2:扉体長(m)

成果の活用面・留意点

ゴミや流木が流下してつまると、作動不可能となることが予測され、スクリーン等の水利施設との複合的な技術が必要となる。本ゲートは小規模な水路への適用する。

具体的データ

図1 自動止水ゲートと集落地区の位置図
図2 水理量の測定位置とゲート開時の模式図
図5 カウンターウェイト長と閉方向モーメントの関係
図6 カウンターウェイト長とゲート開放水位の関係

その他

  • 研究課題名:中山間地域の水路施設の防災管理技術の開発
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成12年度(平成10年~12年)
  • 研究担当者:島 武男、田中 良和、中 達雄
  • 発表論文等:1)島武男ら、地形要因からみる中山間地用水路の特性分析、農業土木学会講演要旨集、280-281、1999.
                      2)島武男ら、中山間地域水路の防災管理のための自動止水ゲートの開発、農業土木学会中国四国支部講演要旨集、133-135、2000.