広域排水解析のデータ入力支援および可視化システム

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要約

パソコン上で、広域排水解析*のデータ入力および湛水域などの解析結果をグラフィック表示できるシステムを開発した。本システムにより、広域排水解析を行う現場技術者が、簡単な操作で正確なデータ作成や解析結果の可視化が可能となる。

  • 担当:農業工学研究所・水工部・河海工水理研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7568
  • 部会名:農業工学
  • 専門:基幹施設
  • 対象:現象解析技術
  • 分類:普及

背景

低平地にある水田地帯では、農地の宅地化などにより降雨の流出率が変化し、洪水危険度が増加する傾向にある。このため、当初の排水計画では次第に洪水に対応できなくなることが予想され、土地利用形態が変化した後の排水施設系の流況解析が必要となる。
排水施設系の流況解析には数理モデルによるシミュレーションが用いられ、多数の地区に適用されている。しかし、現在の広域排水解析システムは、データ入力が複雑であったり、結果として出力される膨大な数値データから湛水域を把握するのに多くの時間を要する他、その操作には専門的な知識が必要である。このため、広域排水解析を行う現場技術者がパソコン上の簡単な操作で、入力ミスの少ないデータ作成および解析結果の可視化ができるシステムを開発した。

成果の内容・特徴

本システムは、広域排水解析の結果として得られる数値データから湛水深分布などをグラフィック表示するものであり、以下のような特徴がある。

  • マウスで指定したブロックの湛水深グラフを表示する機能( 図1左上)や、解析結果の数値データを表示する機能(図1中央下)により、解析結果が容易に把握できる。
  • マウスで指定したブロックの諸元(堤防高、水路底幅など)を表示でき、入力データの確認が容易である。
  • 広域排水解析の結果だけでなく、土地利用面積率(水田面積率、宅地面積率など)を表示でき(図2)、土地利用の変化と湛水域の関係を容易に比較することができる。
  • 広域排水解析のデータをメニューにしたがって入力でき(図3)、入力するデータの種類が明確になるとともに単純な入力ミスを少なくすることが期待される。

成果の活用面・留意点

  • 本システムとGIS(地理情報システム:Geographical Information System)による各ブロックの面積計算を併用することにより、広域排水解析のデータ作成から可視化までの作業(図4)を支援することができる。
  • 本システムの導入により、湛水域の把握に要する時間を短くすることができ、より短い時間間隔で湛水域の時間的変化を評価することが可能になる。

*広域排水解析:排水施設系の水理現象を数理モデルによりシミュレーションする手法のことで、ポンプ場などの 排水施設の配置、規模の検討に用いられる。

具体的データ

図1 湛水域分布と湛水深グラフの表示例
図2 水田面積率の表示例
図3 データ入力画面
図4 排水解析結果可視化システムとGISを導入した排水解析の流れ

その他

  • 研究課題名:広域排水解析のためのデータ作成支援および可視化システムの開発
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成12年度(平成11~12年)
  • 研究担当者:桐 博英、藤井秀人、中矢哲郎
  • 発表論文等:1)桐 博英、藤井秀人、中矢哲郎、排水解析結果可視化システムの構築、平成12年度農業土木学会応用水理研究部会講演集、73-78、2000.