マスコンクリート構造物に発生する温度及び応力の時間履歴解析
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要約
この手法は、パイプクーリングを行う監査廊断面の温度解析を行うものである。盛土荷重が作用するフィルダム監査廊の変形挙動を明らかにすることにより、鋼繊維補強コンクリートを用いた新たな監査廊の設計法を提案した。この設計法では、施工時のコスト縮減が可能である。
- 担当:農業工学研究所・造構部・構造研究室
- 代表連絡先:0298-38-7571
- 部会名:農業工学
- 専門:基幹施設
- 対象:計測・設計技
- 分類:研究
背景
重力式コンクリートダム、フィルダム監査廊に代表されるマスコンクリート構造物を合理的に設計するためには、構造物に発生する応力・ひずみを精度良く予測し、構造形態を決定していくことが必要である。 本課題では、フィルダム監査廊を対象に、構造物の挙動を打設時から供用期に至るまで連続的に予測しうる解析技術を開発することを目的に研究を行った。
成果の内容・特徴
- パイプクーリングを考慮した温度解析手法を開発した。 図1は、パイプクーリングを行ったフィルダム監査廊の経時的な温度分布の解析結果である。図2は、監査廊天端部分のクーリングパイプ周辺(パイプから、10,15,30cm離れた計測点)におけるコンクリート温度の時間履歴である。図1から、1本のクーリンブパイプの温度低減領域は、パイプを中心として半径約30cmの円領域であることがわかる。図2から実測値と解析結果は経時的にほぼ一致する。
- 盛土荷重が作用した場合の監査廊及び周辺地盤に発生する変形及び鉛直応力の解析結果を図3に示す。盛土荷重により監査廊は、天端部が鉛直方向に凹型に、インバートが凸型に変形する。その変形に伴い、天端部内側及びインバート内側に引張応力が卓越する領域が発生する。解析結果は、ほぼ実測挙動に対応する。
- 上記の結果に基づいて、フィルダム監査廊のコスト縮減を目標に、鋼繊維補強コンクリート(SFRC)を用いた監査廊の構造形態の検討を行った。SFRCの高靭性という特徴を生かした設計を行うために、限界状態設計法による新しい設計法を開発し、縮小モデルによる室内実験から、その設計法の妥当性を確認した。
成果の活用面・留意点
成果は、設計・施工の高度化に資する。また、SFRCを用いた監査廊は、施工時のコスト縮減が可能である。留意点として、応力・ひずみの予測精度に関しては、開発した解析方法を実用に供するために、さらに精度の向上について検討する必要がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:マスコンクリート構造物の挙動観測とその解析技術の開発
- 予算区分:経常・依頼
- 研究期間:平成12年度(平成10~12年)
- 研究担当者:浅野 勇・向後雄二・安中 正実(技術会議)民間(新技術研究開発組合)
- 発表論文等:1)フィルダム監査廊の挙動特性,構造研・浅野勇,向後雄二,田頭秀和,ダム工第10回研究発表会講演集,pp.16~18,11.12
- 特許出願中:フィルダムにおける監査廊およびフィルダムにおける監査廊の構築方法(平成10.7.17)