農業水利施設における機能低下の原因分析

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要約

農業水利施設の現況を現地調査、文献調査を行つた結果、構造的・水理的機能低下の原因が明らかになったため、原因に対応した対策が必要である。

  • 担当:農業工学研究所・造構部・水工部上席研究官
  • 代表連絡先:0298-38-7681
  • 部会名:農業工学
  • 専門:基幹施設
  • 対象:計画・設計技術
  • 分類:行政

背景

第二次世界大戦後に完成した農業用用水路は既に30年以上が経過したものも多く、機能的老朽化が進んでいるものも多い。本研究では、現況の農業用用水路系の機能を客観的に評価するための評価項目として現況の構造的・水理的機能について現地調査、文献調査を行い機能劣化の要因を分析した。

成果の内容・特徴

  • 頭首工の現地調査(5地区)で、老朽化が進んでいる事例では、エプロン部の下部に40mm 程度の厚さで空洞が見られ、エプロン部にクラックが生じていること、さらに下流側の局所洗堀が激しいことが明らかになり、またピアー、連絡橋等のコンクリート部の顕著な構造的劣化(強度、中性化)は見られない。
  • 洗堀対策として、護床工が過去に追加されているが局所洗堀は進行しており、改修工法として、現況河床勾配に合わせた護床工が長期的に有効である。
  • 開水路については、目地の劣化による漏水、粗度係数の低下により通水能力の低下が見られ、目地の改修を行う必要がある。
  • 水路トンネルの調査事例(3地区)では、漏水が局所的にあるものの、コンクリートの強度劣化は少なく、中性化深さは築造後25年で最大10mm程度と標準的な範囲に入る。
  • パイプラインでは水質により、粘土、炭酸カルシューム等の付着による通水断面の減少が著しいものが見られ(2地区)、パイプラインの洗浄などの対策が必要である。

成果の活用面・留意点

施設の構造機能評価を行う際には、効率的に行うために重点的な評価項目を決める必要がある。抽出された機能低下の問題点について重点的に研究を進めていく必要があるため、プロジェクト課題として今後研究を行う。

具体的データ

表1 農業水利施設の維持管理・改修に於ける問題点と原因、対応策

その他

  • 研究課題名:農業用用水路系更新のための機能評価手法の開発
  • 予算区分:経常、依頼
  • 研究期間:平成12年度(平成9~12年)
  • 研究担当者:吉野秀雄(水工部長)、谷茂、臼杵宣春(現九州農政局)、片山秀策(現農林水産技術会議筑波事務所)、石堂隆憲(現緑公団)、木俣勲、太田弘毅(現JICA専門家)、古谷保(現JICA専門家)、小前隆美(現農村整備部長)、加藤敬、宮本幸一(現企画連絡室長)、有田博之(現新潟大学)、長利洋、早瀬吉雄