傾斜地水路系の流れ解析のための画像処理による流速計測手法

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要約

本手法は、境界形状や流状が複雑な傾斜地の水路系内の構造物まわりの流れなどの流速計測に適用できる、近傍粒子郡の相対変位の総和を粒子対応付けの指標としたPTV(Particle Tracking Velocimetry)手法である。

  • 担当:四国農業試験場・地域基盤研究部・地域防衛研究室
  • 代表連絡先:0877-62-0800
  • 部会名:農業工学
  • 専門:基幹施設
  • 対象:農業工学
  • 分類:研究

背景

傾斜地農地の水路系内の構造物まわりにおいては、速度の大きな流れが通過するため、安全面や管理面で不都合な現象が生じやすい。そのような現象の摸型実験による把握のためには、非接触で多点を同時に計測できる画像処理による流速計測手法は有利な点が多い。
画像処理による計測では、良質の画像の取得が一般に重要とされる。しかし、境界形状が複雑で流速が大きい急勾排水路内の構造物まわりの流れなどの解析においては、粒子像輝度の時間変動が大きい場合や、撮影間隔に対し流速が大きい場合などが多く、良質な画像の取得が比較的困難である。
そこで実用な計測のために、計測点の数よりも、比較的低質な画像条件においても異なった計測地を少数に抑制することを優先する手法の開発を行う。なお、個々の計測値を高精度とするために、画像処理による流速計測手法のうち、粒子を個々に対応つけるPTVを用いる。

成果の内容・特徴

  • 本手法では、粒子像の手法としてその重心位置だけを用い、大きさ及び明るさは考慮しない。
  • 粒子対応付けの指標として、図1に示すように、第一画像における着目粒子および第二画像における候補粒子それぞれのm個の近傍粒子のうちn個の粒子の、中心粒子に対する相対変位の総和を用いる。なおm>nであり、これらは予め定める。相対変位の算出は、第一、第二画像のそれぞれにおいてm個の近傍粒子からn個を選ぶすべての組み合わせについて行い、その最小値を採用する。
  • さらに誤対応を減少させるため、第一、第二画像間で双方向に対応付けを行い、両方で一致した結果のみを採用する。
  • 以上により、粒子像サイズや輝度の分布が広く、また粒子の移動距離が大きい画像条件等に対して、他の方法に比べ一回の処理で得られる流速値が少ない場合もあるが、図2、およ図3に示すように、誤対応の少ない結果を得ることができる。

成果の活用面・留意点

本成果は、傾斜地における水路系内の構造物に関する水理解析などに活用できる。

具体的データ

図1 手法の概略
図2 人為的に作成した画像に適用したときの他の手法とおの精度比較
図3 底部分水模型の流れより取得した画像による流速の評価

その他

  • 研究課題名:急勾配水路における災害及び機能阻害の要因となる水理現象の解明
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成12年度(10年~12年)
  • 研究担当者:島崎昌彦、川本治、吉迫宏
  • 発表論文等:島崎昌彦ら、粒子郡配置の相対変位を対応付けの指標としたPTVについて、可視化情報、19(Suppl.2)、181-182,1999