集落環境整備に係る整備工種の導入傾向と住民の早期実現期待度

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要約

集落の環境整備事業導入に当たって、骨格となる事業工種の実態を明らかにし、また、住民要求から工種の優先順位付けとその早期実現期待度を明らかとした。それによると、道路・水路に係る工種が集落構造の骨格づくりとして挙げられた。また生産・生活基盤の一体的整備の期待の地域的相違が明らかとなった

  • 担当:農業工学研究所・農村計画部・上席研究官室
  • 代表連絡先:電話 0298-38-7729 Mail Address
  • 区分:技術及び行政
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

近年、農業生産基盤の整備に併せ、地域住民の豊かな生活環境整備に対する関心が高まっている。しかし、事業計画策定の段階においては、基準や指針が十分に 備わっていないことから各地区の創意工夫に頼っているのが現状である。以上の状況に鑑み、本研究では、集落環境整備に当たっての事業実施の実態と軸となっ ている工種の抽出、並びに住民の期待度を明らかとした。

成果の内容・特徴

  • 農村整備事業の代表的な事 業制度である農村総合整備事業を取り上げ、約210地区の事業計画内容を分析したところ、(1)本事業の実施地区は、混住化地域において約20集落を取り 込んだ広域的な事業となっている、(2)事業内容は、生産基盤工種を平均 1.5工種、同時に集落道等の生活関連工種を平均 4.6工種取り込んでおり、生活環境整備に比重が置かれた一体的整備方向が明らかとなった。
  • また、生産基盤工種と同時に採択されている生活基盤工種の組み合わせ(一体的整備)状況を整理したところ、農道や水路を基軸としながら生活環境整備が実施されている状況等が明らかとなった(図1)。この結果は、道路・水路が整備の骨格となっていることを示している。
  • さらに、 地域特性の異なる中間・山間農業地域と都市・平地農業地域を選定(注)し、一体的整備としての生産基盤工種の実施後、生活基盤工種の完成まで何年我慢できるかを質問し、その年数を「早期実施期待度(ガマン年数)」として示した(図2)。これによると、中間・山間農業地域は、特に日常生活に密着した工種(集落道、集落排水等)に特化して期待度が高いが、都市・平地農業地域では、かなり平均化していることが明らかとなった。

(注)中間・山間農業地域64件、都市・平地農業地域45件のアンケート調査による。

成果の活用面・留意点

  • 本指数は施工計画立案時の指標としてだけでなく、環境整備に関る住民の検討工種 の重みとして活用することが可能といえる。
  • また、生産基盤ならびに生活基盤の一体的整備に当たっては、社会環境ならびに各 種属性別住民ニーズを勘案することが求められる。

具体的データ

 図1 生産基盤工種と生活基盤工種の実施状況
図2 早期実現期待度(ガマン年数)

その他

  • 研究課題課題名:集落空間構造に対応した道路・水路及びその周辺の環境整備指標の策定
  • 中期計画大課題名 :多面的機能を考慮した生産・生活基盤の一体的整備管理手法の開発
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間 :1998~2000年度
  • 研究担当者 :筒井義冨、小林宏康、小嶋義次、岡本佳久
  • 発表論文等 :1)小林宏康・岡本佳久・筒井義冨、農村総合整備事業を通した農村環境整備の動向と課題、平10農土学会講演要旨集、718ー719、1998.
                        2)本庄宏行・藤本信義・三橋伸夫・筒井義冨・小林宏康・岡本佳久、農村地域における水辺空間評価に関する研究-集落の形態的特性から見た居住者評価-、農村計画学会学術研究発表要旨集、77ー80、1998.