農道のレクリエーション促進効果の事前判定手法

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要約

農道整備による都市からのアクセス改善は農村のレクリエーション空間としての利用を促進する。ゾーン型トラベルコスト法を使って農道によるレクリエーション促進効果を算定できるが、個々の事業への適合性を簡便に判定するには、一般化費用と圏域人口の関係を示すアクセス図が有効である。

  • 担当:農業工学研究所・農村計画部・地域計画研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7549 Mail Address
  • 区分:技術及び行政
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

農道整備による都市からのアクセス改善は、農村のレクリエーション空間としての利用を促進する。農村空間のレクリエーション機能はトラベルコスト法により 評価されているが、アンケート調査等の多くの作業が必要である。ここでは、農道によるレクリエーションの促進効果を評価するにあたって、個々の事業の適合 性を事前に判定するための手法を提案する。

成果の内容・特徴

農道整備の持つレクリエーション促進効果は、ゾーン型トラベルコスト法を使った次の手法で算定できる。その場合、評価対象とする農道のアクセス改善の大きさ・範囲を示すアクセス図を作成することにより、当該農道によるレクリエーション促進効果の程度が事前に判定できる。事例地区として、茨城県フラワーパークと広域農道フルーツラインを選定した。フラワーパークは、茨城県、千葉県等から年間20万人の来園者があり、フルーツラインはフラワーパークへのアクセス道路にもなっている(図1、表1)。

  • 評価手法
    • 1)事前判定
    • 1: 対象施設から最も遠い来園者を想定し、一般化費用(燃料費、有料道路料金、入園料、時間費用の計)を求める。
    • 2: 一般化費用がそれ以下の地域について、農道の有無による、一般化費用と圏域人口の関係の変化を図2のとおりアクセス図に図示する。
    • 3: 農道によるアクセス改善が大きい場合は、農道がない場合よりも左へシフトする。このシフトの度合いを見て適合性が判断できる。
    • 2)判定後の算定手順
    • 1: 来園者の住所、交通手段、目的等をアンケート調査する。
    • 2: 単位人口当たり来園者数と一般化費用の関係式(図3)を推定する。
    • 3: 来園者に追加費用を課すと仮定した場合の、追加費用と来園者数の関係式からフラワーパーク来園者の消費者余剰を算定する。
    • 4: 農道の有無による消費者余剰の差を求める。
  • 結果
    表1に示すとおり、フルーツラインの効果は主として南北方向である。しかし、図2のアクセス図に示すとおり、アクセスの改善効果は遠方の都市地域に及んでおり、トラベルコスト法による効果算定に適していると判断された。

    アンケート調査によるデータ分析の結果、年間来園者202千人の消費者余剰は 139,343千円/年、フルーツラインがないと仮定した場合の消費者余剰は121,378千円/年であり、その差17,965 千円/年、12.9%がフルーツラインによるレクリエーション促進効果である。

普及のための参考情報

トラベルコスト法による効果算定を行う場合に、図2に示すアクセス図による事前の簡易判定は詳細なアンケート調査に先立つ、適合性の判定手法として利用できる。

具体的データ

図1 フラワーパーク・フルーツライン位置図
図2 フルーツラインのアクセス図
表1 主要地点からのフラワーパークへの距離と所要時間
図3 一般化費用と人口千人当たり来場者数の関係

その他

  • 研究課題名:農道整備による周辺効果の定量評価手法の開発
  • 中期計画大課題名:農村活性化のための施設資源の評価手法の開発と農業農村整備等の波及効果の解明
  • 予算区分:交付金研究
  • 研究期間:2001年度
  • 研究担当者:蘭嘉宜、八木洋憲
  • 発表論文等:蘭嘉宜・八木洋憲・丹治肇、農道整備事業が持つレクリエーション促進効果の評価、農業土木学会論文集投稿中