細密メッシュデータによる農林地の持つ環境保全機能評価法とその総合化

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要約

細密環境要因メッシュデータ(約100m×100m)とGISを使って、流域を対象に農林地の持つ環境保全機能を評価するシステムを開発した。さらに、これらの値を総合化し、集落ごとに1つの指標で評価し地域区分を行う手法を開発した。

  • 担当:農業工学研究所・農村環境部・景域研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7556 Mail Address
  • 区分:研究
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

デカップリング政策を始めとして、農林地の持つ環境保全機能を定量的に評価することが求められている。行政的に利用できる精度で、農林地の持つ環境保全機能を定量的に評価し、更にこれらを総合化して1つの指標で評価する手法の開発を試みた。

成果の内容・特徴

  • 埼玉県都幾川流域をモデル 地域として、国土数値情報1/10細分メッシュ(約100m×100m)を基本単位とし、環境要因メッシュデータベース、機能評価式およびGISを使っ て、9種類の農林地の持つ環境保全機能評価データベースを作成した。現況土地利用において機能が発現される土壌有機物分解機能、景観保全機能、生物相保全 機能(2種類)の4種類については新たな評価法を開発した。他の機能評価は、現況の評価値と全農林地が荒れ地化した場合の評価値との差により評価した。そ れらは「国土資源」研究プロジェクト等、既往の研究成果に基づく機能評価式を使った水かん養、洪水防止、土砂崩壊防止、土壌侵食防止(図2)、大気浄化の5種類の国土保全機能である。
  • 水田の景観保全機能を、土地利用データおよび住民のアンケート調査より導出した評価式を使って評価する手法を開発した(表1、図3)。ここで導出した評価式は係数を変えれば、関東地方の他の平地水田地域でも適用できることが確認された。生物相保全機能では、対象を山地性鳥類とトンボ・カエル類とに分けて、土地利用データを利用して、ハビタットの面から評価*を行う手法を開発した。(図1、図4)。
  • 個別環境保全機能の総合化に関し、集落を単位として各環境保全機能値に、係数(全国の一般住民を対象としたCVM法による環境保全機能重要度評価係数**)を乗じて、環境保全機能を1指標にまとめて評価する手法を開発し、これによる地域区分マップを作成した(図5)。
  • *農業環境研究成果情報(1995):農村環境の生物保持機能に着目したビオトープ結合システム、Vol.12、No32
  • **吉田謙太郎、他2名(1997):CVMによる全国農林地の公益的機能評価、農業総合研究、Vol.51、1-57

普及のための参考情報

市販のPC用GISを用いて100mメッシュを基本評価単位として評価しているため、評価の妥当性検証、機能増進技術の適用範囲の検討、土地利用の変動に基づく保全機能のシミュレーションなどが容易である。また地方自治体等で、この成果を利用したいというニーズがあるが、そのためには都道府県等の試験研究機関でこのシステムの適用性を検討していく必要がある。

具体的データ

図1 環境評価システムの模式図
表1 景観保全・生物相保全機能の評価手法
図2 土壌侵食防止機能評価図図3 水田の景観保全機能
図4 生物相保全機能(トンボ・カエル類)図5 環境保全機能総合評価図

その他

  • 研究課題名:環境保全機能の総合的解析による景域管理計画手法の開発
  • 中期計画大課題名:環境保全機能の総合的解析に基づく景域計画策定手法の開発
  • 予算区分:交付金プロ(農村経済活性化)
  • 研究期間:2001~2002年度
  • 研究担当者:加藤好武、小嶋義次、富田淳志
  • 発表論文等:1) Kato,Y. Residents’ perception of agricultural landscape in Japan, International seminar on multi-functionality of agriculture,FFTC,123-135,2001
                      2)広原隆・横張真・加藤好武・渡辺貴史、農住混在地域における小規模物質循環圏の構築に関する基礎的研究、ランドスケープ研究、投稿中