農業集落排水処理施設整備に関する住民意識の地域間比較

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要約

集落排水事業に対する住民意識を、TN法及びDEMATEL法により事業実施後調査すると、岩手県盛岡市矢巾町では身近な生活環境改善効果を中心に評価されるのに対し、福島県会津田島町では定住条件の改善効果が全般的に評価される。

  • 担当:農業工学研究所・地域資源部・上席研究官
  • 代表連絡先:0298-38-7680 Mail Address
  • 区分:技術及び行政
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

集落排水事業を推進し、しかも整備された施設を良好に管理してゆくには、地域住民自身が積極的に施設を活用していこうとする意欲を引き出す説得力のある事業の展開が不可欠である。このため、都市近郊地域と考えられる盛岡市矢巾町及び中山間地域と考えられる会津田島町において調査を行った。つぎにこの2地区で事業実施後にブレーンストーミンゲを基本にしたTN法(東北農試法)及びグラフ理論に基づくDEMATEL法(Decision Making Trial and Evaluation Lab oratory method)により、住民の事業に対する意識を検討するとともに、分析結果を比較することにより、住民の意識について地域間での相違点を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • TN法により調査項目を整理し、アンケート調査表を作成した。アンケート調査終了後調査データをDEMATEL法により分析した。アンケート調査表の配布については対象者数は60人で、属性毎に同数になるように配布を役場担当者に希望したが、結果は表1のようになり、有効回答数は都市近郊地域(施設対象人口608人うち農家人口405人)では36人、中山間地域(施設対象人口295人うち農家人口253人)では27人であった。
  • DEMATEL分析では、直接的に項目間で影響を与える場合と影響を受ける場合に分けて算定する。さらに全般的な傾向を検討するため、両方の場合を総合的に算定する。表2は、総合的な算定結果を示している。図1、2は表2の効果項目のうち高い評価を受けた効果項目間の関係を模式的に示している。
  • 図1、2において都市近郊地域では「清潔感の向上」と「水洗化」の両効果項目に矢印の数が集中している。また中山間地域では、「臭気がなくなる」の効果項目に矢印の数が集中している。この項目が定住条件の改善効果の各項目と高い相関がある。
  • 農業集落排水事業は地域住民に様々な効果をもたらしている。その効果の内容は地域的な条件によって異なるものの農村生活において基本的な役割を果たしている。

普及のための参考情報

2地区での調査結果であるが、他の地区の調査結果と比較することによって、住民意識の地域間比較に役立つと考えられる。

具体的データ

図1 岩手県矢巾町(都市近郊地域)における施設整備後の効果項目間の関係(全員)
表1 参加者の属性
図2 福島県会津田島町(中山間地域)における施設整備後の効果項目間の関係(全員)
表2 事業実施後の効果項目

その他

  • 研究課題課題名:天日乾燥による簡易な汚泥処理技術の開発
  • 中期計画大課題名:有機物循環利用のための処理技術及び自然エネルギー利用技術の開発
  • 予算区分:交付金研究
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:端 憲二、本間新哉、上田達巳、木俣 勲
  • 発表論文等:木俣 勲:農業集落排水処理施設整備に関する住民意識の地域間比較分析、農業土木学会論文集 投稿中