LCA手法を用いた水車除塵機の環境負荷量評価

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要約

水車除塵機の実証試験を事例として環境負荷量LCA手法によって評価した。耐用年数15年間のライフサイクルでのエネルギー消費量とCO2発生量はそれぞれ、電動除塵機が水車除塵機より2.67倍、1.73倍大きい。水車が行う仕事を算入するとエネルギー収支の差が4.8倍になり、自然エネルギー利用の効果が明らかになる。

  • 担当:農業工学研究所・地域資源部・上席研究官
  • 代表連絡先:0298-38-7680 Mail Address
  • 区分:技術及び行政
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

農業用水路の流水エネルギーを動力として、水路内のごみを水路外に除去する水車除塵機にLCA(Life Cycle Assessment)手法を適用して環境負荷量を評価する。電動機を動力とする場合との比較に基づいて、水車の利用による環境負荷の軽減効果、効果的な使用形態を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 本情報は、長野県三郷村で1995~1996年に行った水車除塵機の実証試験(図1、表1)を事例として、材料、製作、輸送、設置、使用、廃棄及びリサイクルに至るライフサイクルでのエネルギー消費量(LCE;Life Cycle Energy),CO2発生量(LCCO2;Life Cycle CO2)の算定を行った結果である。算定には,1995年の産業連関表に基づいて作成された原単位データベースを使用した。
  • 15年間通年運転する水車除塵機のLCEは148.0 GJ、LCCO2は13.2 Mgであった(図2)。その約3分の2は構成材料によるものであり、その中でも減速機などの機械部品類が60%を占めている。このことから、除塵スクリーンの軽量化、動力伝達機構の簡素化、防錆が不要なステンレスの使用を図ると、さらに環境負荷量を軽減する効果が大きい。
  • 水車の代わりに電動機を使用する場合には、材料として水車等の鋼材が減るが、電気設備が増え、運転のための電力消費によりLCEは2.67倍、LCCO2は1.73倍に増加する。水車除塵機とのLC Eの差は原油6.3 klに相当する。
  • エネルギー量に水車の出力による仕事を算入すると、水車除塵機の累積エネルギー消費量は図3のように年々低下する。水車除塵機を通年運転する場合には、水車の総仕事量はLCEの44%に相当し、電動除塵機とのLCEの比は4.8倍になることから、自然エネルギー利用の効果を明らかにすることができる。

普及のための参考情報

LCA手法によって環境負荷発生量を分析し、経済性、省力性などと合わせて検討することで、機械や作業についての総合的な評価と改善点の摘出を行うことができる。

具体的データ

図1 水車除塵機
表1 実証試験の諸元
図2 水車除塵機と電動除塵機の環境負荷発生量の比較
表3 水力エネルギー所得の算入の有無、運転期間によるエネルギー累積消費量の変化

その他

  • 研究課題課題名:農業用小水力・風力利用技術のLCA評価手法の開発
  • 中期計画大課題名:農村活性化のための施設資源の評価手法の開発と農業農村整備等の波及効果の解明
  • 予算区分:交付金研究
  • 研究期間:1999~2001年度
  • 研究担当者:木俣 勲、端 憲二、奥山武彦、小綿寿志
  • 発表論文等:奥山武彦・小綿寿志・後藤眞宏:LCAによる水車除塵機の環境負荷分析、農工研技報、印刷中