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イオンが表面伝導する状態を懸濁液の電導度計測から求める理論を提示した。また、低水分粒子層の電導度計測から、表面伝導に果たす水膜と粒子接点連結水 (リング水)の役割を明らかにした。
処理水利用を進める場合、多量のイオンが土中に注入されるため、これらのイオンの動態監視が必要となる。その簡易な方法として電導度計測があるが、測定結果の意味はあいまいである。本研究では、水分によるイオン解離・吸着から生ずる極めて高い表面伝導の現象に着目し、これを電導度から明らかにする方法を懸濁状態・飽和状態・低含水状態について統一的に示す
懸濁液の有効電導度σ*は溶液電導度σとの比で表され、Self Consistentなセルモデルに基づくと、懸濁粒子の体積分率(φ)・表面電導度(ks)・球の半径(a)から次式で決まることが明らかとなった。すなわち、表面電導度が懸濁液の電導度測定から決定できる。
σ*/σ=(1-2λφ)/(1+λφ), λ≡(1/2-β)/(1+β)、β≡ks/aσ
ガラスビーズ等の充填層では,飽和状態の有効電導度が間隙率に比例する。すなわち、σ*/σ=(間隙率)/(屈曲度)(2)と近似される。ここで屈曲度は、充填層により異なる値をとり、その測定結果を表1に示す。電導度法での結果は、以前提出した理論値やガス拡散法の結果(技術会議研究成果257,1991)に比べてやや低い値となり、表面伝導効果の可能性が指摘された。
含水率の極めて少ない領域における帯電表面の水膜と粒子接点連結水(リング水)の連結実態が高感度の電導度計測から明らかにされた。図1、図2に示す実験結果は、水分量が増えても電導度が増加しない領域の存在を示す。これは、電導度に寄与しない水の存在を示し、リング水の成長領域に対応する。この領域の一定の電気伝導は表面水膜に帰因すると考えられるが(水膜律速)、含水率2%以下では水膜も接点も不完全な濡れとなり水の連結性は悪く電導度は低下する(接点律速)。又、浸潤速度測定から求めた前進毛管圧(図3)も含水率2%以下で濡れが不完全であることを示し、両者の一致はほぼ満たされた。尚、含水率5%を越えると隣接リング水の間の連結が生じ、電導度が急速に増大する。