空間ガンマ線による花崗岩の風化度判定法

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要約

中低温地熱賦存地域に分布する花崗岩の風化度の違いは、地表から放出される214Biの空間ガンマ線量と相関を持っていることが明らかになった。これにより放射能探査を行うことで新鮮岩から土砂状に風化した岩盤までの風化度が判定できる。

  • 担当:農業工学研究所・地域資源部・地下水資源研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7539 Mail Address
  • 区分:研究
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

中低温地熱開発適地選定のための調査法として、地熱水の影響により生じた風化・変質帯の分布を調査する方法がある。岩盤を、緻密な順に最も新鮮なA級から土砂状であるDL級までにランク分けする岩級区分は、岩石の風化度に対応する指標であるが、目視等実施者の熟練度に依存する判定要素を含む方法である。また、すべての岩盤に適用できる物理試験法は提案されていない。これら従来の調査法は時間と経費を要することから、中低温地熱エネルギーの開発が期待される中山間地域などでの利用の妨げとなってきた。そのため、車載した放射能探査器により風化・変質帯の分帯を迅速・経済的に行う方法を開発するために、露頭から放出されるガンマ線と風化・変質帯の関係を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 風化度がC級に分類される花崗岩が主に分布しているダムサイト(佐賀県)の監査廊内において、掘削面の岩級区分(図1)と放射能探査を行ったところ、風化度が小さくなる(岩級区分:D→CL→CM→CH)と214Biのカウント値が増加する傾向が認められる(図2)。
  • 風化が進みマサ化した花崗岩山地(岩手県北上山地南部)における、露頭の岩級区分と放射能探査結果からも、風化度が小さくなる(岩級区分:DL→DH→≧CL)とのカウント値が増加する傾向が認められる(表1、図3)。
  • これらの放射能探査結果を解析したところ、放射能探査によって測定可能な214Bi、40K、208Tlの3種類の天然放射線源のうち、214Biが風化度と最も高い相関を示した。文献によれば岩石に含まれるUは風化作用で溶脱されやすいとされており、岩級の劣る岩盤ほどUの娘核種である214Bi含有量が少なくなり、放射能探査のカウント値も小さくなったと推定された。以上より花崗岩の風化・変質と、そこから放出されるガンマ線には密接な関係があることが明らかになり、放射能探査が岩盤の風化度調査に有効であることが確認された。

普及のための参考情報

本研究成果を基に、花崗岩地域の風化度についてより広域的な調査が可能な放射能探査手法の開発が期待される。

具体的データ

放射能探査範囲
図1 岩盤調査地域の岩級区分図
表1 風化花崗岩の岩級区分

図2 岩盤地域の岩級区分と空間ガンマ線の関係
図3 風化岩地域の岩級区分と空間ガンマ線の関係

その他

  • 研究課題課題名:中低温地熱賦存地域の風化・変質がガンマ線の空間分布に及ぼす影響の解明
  • 中期計画大課題名:農村地域及び農業用貯水池の有する公益的機能の解明・評価
  • 予算区分:交付金研究
  • 研究期間:1999~2001年度
  • 研究担当者:石田聡、今泉眞之、土原健雄
  • 発表論文等:今泉眞之・石田聡、環境地質調査ツールとしてのγ線スペクトロメトリー,第11 回環境地質シンポジウム講演要旨集、235-240、2001