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東北及び九州の中山間地域水田において、畦畔・欠口の崩壊等を考慮した降雨-流出シミュレーションを行い、水田耕作による流出抑制機能が降雨特性や水田面積の割合で大きく異なることを事例的に明らかにした。
水田には雨水を一時貯留し、流出を抑制する機能がある事はすでに指摘されており、これまで国土スケールや特定流域での検討がなされてはいる。しかし、地域によって降雨特性、流域内での水田面積割合など流出にかかわる条件が異なり、耕作状況の変化による流出の抑制機能も異なることが予想される。そこで、流域における水田面積の割合の小さい中山間に着目し、降雨条件、水田面積割合が異なる試験地区を選択し、既存の雨水貯留モデルを用いて水田の耕作による流出抑制機能(以下「機能」)の比較検討を行うことにより、機能を発揮できる条件を事例的に明らかにする。
降雨条件の異なる東北及び九州地域において、流域内の水田面積割合の異なる試験区(表1)を設定し、雨水貯留モデル(図1)を適用し、実測データに基づいたシミュレーションから機能の検討を行った。放棄水田モデルは放棄による、畦畔・欠口の崩壊等を現地調査に基づき再現した(図2)。なお、各確率降雨でのシミュレーションでは、試験区内のすべての耕作地が耕作された場合とすべて放棄された場合を比較した。
本モデルでは表面流出に着目しており、放棄による流域保留曲線は文献による一般的なデータを用いているため、放棄の状況により、考慮する必要がある。また、流出抑制機能の発揮にのみ着目して行ったが、実際は、聞き取り調査などからも、管理が行われている試験区では災害防止のために降雨が人為的に流域外に排除されていることが明らかとなっている。このため、耕作水田の機能を期待する場合には実際の管理作業の影響や効果にも留意する必要がある