低圧パイプラインシステムによるかんがい技術

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

低圧パイプラインシステムは水管理の省力化と適正化を実現できる。また、暗渠管と接続し、これに弾丸暗渠を組み合わせることによって地下かんがいも可能である。

  • 担当:農業工学研究所・農地整備部・水田整備研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7555 Mail Address
  • 区分:技術及び行政
  • 分類:参考

背景・ねらい

水田には雨水を一時貯留し、流出を抑制する機能がある事はすでに指摘されており、これまで国土スケールや特定流域での検討がなされてはいる。しかし、地域によって降雨特性、流域内での水田面積割合など流出にかかわる条件が異なり、耕作状況の変化による流出の抑制機能も異なることが予想される。そこで、流域における水田面積の割合の小さい中山間に着目し、降雨条件、水田面積割合が異なる試験地区を選択し、既存の雨水貯留モデルを用いて水田の耕作による流出抑制機能(以下「機能」)の比較検討を行うことにより、機能を発揮できる条件を事例的に明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 用水と排水が管路であり、同一のボックスにおいて給水栓と越流によって水位調整が可能な排水口を持つ。このため、給水量の調節と水田水位の設定が一元的に行え、無駄な取水と排水を抑えことができる(図1)。
  • 本システムが導入され、さらに畦畔漏水防止対策を行ったJ地区(再整備地区、面積26ha、区画:長辺200m、短辺100m)における水稲栽培時の雨量+取水量は1,200mm前後となった(表1)。また、農家18戸による再整備後の評価は概ね良好であった(図2)。
  • 水甲を閉じ、暗渠管に用水を流入させることで地下かんがいが可能であり、給水栓と排水口高さの調整で田面下の地下水位をコントロールすることができる。試験ほ場では、弾丸暗渠間隔2m区間において、地下水位は40cm~60cm程度に保つことができた(図3)。
  • 本システムを採用している47地区の施工費をみると、パイプラインの最小管口径がφ125mmと大きいため、揚水機場設置の場合と同程度であるが、地区内圧送がなく営農段階で電気代を必要としないため、維持管理費の削減が図れる。

普及のための参考情報

大区画水田地区の水管理技術であり、水田間の標高差の小さい地区で適用する。

具体的データ

図1 低圧パイプラインシステム
表1 低圧パイプラインを採用したJ地区の取水実態
図2 J地区における再整備後の農家評価
図3 暗渠中間地点における地下水位

その他

  • 研究課題課題名:中山間地域の豪雨災害防止のための農地及び水利施設の適正管理方法の解明
  • 中期計画大課題名:農地の整備水準の解明と大区画ほ場等の水分制御技術等の開発
  • 予算区分:交付金研究
  • 研究期間:1999~2001年度
  • 研究担当者:谷本 岳、藤森新作、井村英樹、若杉晃介、北川 巌(北海道立中央農試)、小野寺健一(岩手県農研セ)、瀬戸口洋一(鹿児島県)
  • 発表論文等:1)藤森新作,高生産性水田の管理技術、高生産性水田農業と基盤整備、農業土木学会選 書16、19-44、2001
                      2)藤森新作,自然圧パイプラインによる地下かんがい方式、機械化農業、3009、4-7、2 001.