CFDのアニメーション化による多連棟温室の気流・気温分布解析

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要約

CFD(数値計算流体力学)の結果をアニメーション化することにより、多連棟温室の自然換気時の気流や気温の分布が評価できる。屋根開放型温室では室内空気の逆流に伴って気温分布が形成され、フェンロー型温室では二つの渦ができるが気温分布は比較的均一である。

  • 担当:農業工学研究所・農地整備部・農業施設研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7655 Mail Address
  • 区分:研究
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

温室の周年利用化に伴い、強日射時の高温抑制が問題となっており、自然換気の向上が強く求められている。一方、温室の大型化に伴い、気温や気流の空間分布の均一化がより重要となっている。近年、このような解析のためにCFD(Computational Fluid Dynamics、数値計算流体力学)による手法が期待されている。CFDでは、実験ではとらえられないような微細な箇所についても、環境の3次元予測が可能であり、しかも、アニメーション機能を利用して視覚的に検討することも可能であるため、温室構造や換気窓の設計に役立つ。そこで、最近の多連棟温室にCFDを適用し、気流・気温分布の動的解析を行う。

成果の内容・特徴

  • 高軒高の屋根開放型温室(屋根勾配30゚、屋根開度83゚、屋根は樋部を軸として棟部から開放)とフェンロー型温室(屋根勾配22゚、天窓開度44゚)を対象とした。いずれも、1棟の間口3.2m、軒高4m、奥行き30mの6連棟温室である。側壁に開口はない。
  • 温室内外の気流のアニメーションによれば(屋外風速は3.5m/s、以下同様)、屋根開放型温室の場合、外気は最も風下側のスパンから主に流入し、室内空気と混合しながら風上側に向かう(図1)。内気は風上側のスパンから流出する。このような気流分布に伴って気温分布が形成され、気温は風上側の方が高い(図2)。
  • フェンロー型温室の場合、外気は風上側スパンの風上に開放された天窓や風下側スパンの天窓から流入する(図3)。それぞれの流入気流に誘発されて、室内の風上空間と風下空間に二つの弱い渦が形成されるが(図3の最も下の図)、比較的乱れており、結果として気温分布は比較的均一である(図4)。ただし、平均気温は屋根開放型温室よりも高い。なお、風上側スパンの風上に開放された天窓から流入する外気の一部は作物群落に到達せず、近傍の天窓から流出する。

普及のための参考情報

温室構造、換気窓の形態や位置などを種々に変化させ、気流や気温を動的に評価することにより、温室の設計や性能評価に利用できる。

具体的データ

図1 屋根開放型温室の気流の拡散の様子
図2 屋根開放型温室の気温分布(中央断面)
図3 フェンロー型温室の気流の拡散の様子
図4 フェンロー型温室の気温分布(中央断面)

その他

  • 研究課題課題名:農業環境指標による多面的な農村の地域診断のための汎用ソフト
  • 中期計画大課題名:農業施設の補強対策技術と空気・光環境改善技術の開発
  • 予算区分:依託プロ[STAフェロー]
  • 研究期間:1999~2001年度
  • 研究担当者:In-Bok Lee、佐瀬勘紀、奥島里美、石井雅久、小綿寿志、森山英樹
  • 発表論文等:Lee, I.B., Okushima, L., Ikeguchi, A., Sase, S. and Short, T.H., Prediction of natural ventilation of multi-span greenhouses using CFD techniques and its verification with wind tunnel test, ASAE Paper No. 005003, 2000.